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アヤちゃんにそう言われたけれど、言われたことがよく分からず、心細くて、
「ニャー」と鳴いた。
「おい、おい。アヤ。そんな可哀想なこと言うなよ。
ヴァン、上手くいかなかったら、あきらめて戻っておいで」
操縦席に座るアヤちゃんのお父さんが振り向いて、優しくそう言ってくれた。
アヤちゃんのお父さんもヘッドセットを着けていた。
「パパ! ヴァンは、必ずやり遂げるわ。
あたしたちは、最強の猫又を誕生させるために、ターキッシュヴァンの純粋種のヴァンを、トルコから連れてきたのよ。
世界制覇を成し遂げるためには、絶対、ヴァンに猫又になってもらわなきゃ!」
アヤちゃんは、ヘッドセットの両脇からはみ出したツインテールの髪を揺らして声を発した。
――ネコマタ? なんだ。それ?
思えば、アヤちゃんたちとの出会いの記憶は、おぼろげだ。
ぼくを生んでくれたお母さんのことも覚えていなくて、ブクブクと息が苦しくなりながら、水の中で恐怖を感じていたことが、アヤちゃんと出会う前のただ一つの記憶だ。
ぼくは、いつの間にか、アヤちゃんたちの広いお邸で暮らすようになっていた。
ヘリコプターの床にある蓋が開いた。
ぼくを入れた檻はロープに吊るされて、ヘリコプターの床に開いた穴から、空中に降ろされ始めた。
下を見ると、檻の網目から山の頂上が見えた。
――あれが猫岳か。
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