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檻は、地面に着く直前で底が抜け、ぼくは地面に落とされた。
ヘリコプターは、さっさと空の彼方に消え去った。
山頂は風が強く、身を隠すような場所も、食べられるような物もなかった。
ぼくは尾根を下り、途方に暮れて、山の中をさまよい歩いた。
お日さまが大きく傾き、辺りがどんどん暗くなってきた。
木立と草むらの中、目の前を、小さなものが飛んだ。
ぼくは、右前足でそれを払った。地面に落ちたそれは、羽根虫の死骸。
習性で、反射的に殺してしまった。
ぼくは虫の死骸から目をそらし、
「ニャッ(お腹すいた)」
と、小さく鳴いた。
周りを警戒して、声を出さないようにしていたのに、つい鳴いてしまったのだ。
「腹が減ったなら、殺したその虫を喰えばいい」
突然、頭上からそんな声が聞こえた。
――えっ、人間の言葉?
でも、声は人間のものとは、思えなかったぞ。
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