第1話 修行の山

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「仲間にしてもらえるなら、お願いします」 そう言ったときは、『猫又になって戻ってくるのよ』というアヤちゃんの言葉は頭になかったけれど、 ――こんな山の中、仲間がいなかったら生きていけない。 という思いから出た言葉だった。 「では、着いてこい」  言葉を残して、10匹の猫は山の尾根を、 上に向かって走り出した。 人間の言葉をしゃべっている猫が、10匹の中のどの猫なのか、ついに分からなかった。 けれど、ぼくは猫たちを追いかけた。 生き延びるために。 ぼくは走りながら、声をあげた。 「ニャニャ(頂上に行くのですか)。  ニャミャニャ(ぼく、頂上から降りてきたんですけれど)」 するとまた、人間の言葉が返ってきた。 「お前が人間の乗り物で降り立ったのは、猫岳の西峰。 我々が向かうのは、猫岳で一番高い峰の猫天狗峰だ」
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