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夏樹の発言に触発されてか委員長は弾かれるように、勢い良く立ち上がって被害者Aの胸ぐらを掴み上げた。
「私は見てたわ! このバカ女がイジメの主犯格よ! こうなって当然! あの子を自殺に追いやった報い!」
八つ当たりのような言動でこまめに発散することで、辛うじて抑制していた激情の奔流解放とでもいうのか。
「いえ違うわね! 自殺じゃあ言い方が正しくない! あの子は他殺よ! 確かにコイツに殺されたんだわ! 法にも裁かれず! 手も汚さない卑劣なやり方でね! 死刑じゃ生温い! 朦朧とした生き地獄がお似合い!」
「きゃわぁっ」
心羽が悲鳴を発してペタンと座り込む。
ヒステリー委員長の鬼気迫る憤怒の叫びに圧倒され、ずっと立ちっぱなしを唱えた逆張りの意地も挫けたか。
「大丈夫ですか? 心羽さん!」
妹分を案じる夏樹もどこか余裕がない。
「な〜にソナ姉? 平気だよ!」
「じゃあ怖いんですねヨシヨシ」
「へ〜きだって言ってんじゃん」
「ガクブル状態じゃないですか」
今さら強がる心羽の頭を夏樹が繰り返し撫でた。
撫でる側も撫でられる側も相互に癒やし合うような、微笑ましい光景を前にして委員長は我に返ったらしい。
「見て見ぬフリする学校もクラスメイトも犯人と同罪、いえ欺瞞に満ちた傍観者こそ正当に裁かれるべき悪ね」
「心中お察し申し上げますが現段階では不明点の究明、及び即時的な解決策の模索が優先事項かと思われます」
「アナタまるでお役所の物言いだけど『まずは』とか、『段階が』とかの表現を好む連中って信用できないわ。その手の輩は傾向的に真摯さを装うことだけに熱心で、ことごとく鈍足かイスの温め係ばっかりなんだものね」
「同感ですが警察などが出遅れるのは法律上の問題で、『事件発生』と認めねば手続きにも進めないからです。我々の組合は存在自体を社会に秘匿されていますから、いわば超法規的に事態収束への最短ルートを選べます」
早口で理屈こねる系どうしの舌戦が白熱するさなか、頭をショートさせていた心羽が唐突にも発狂して叫ぶ。
「むか着火いんふぇるのぉぉぉぉう!!」
「きゃ〜心羽さん力おさえてくださ〜い」
室内じゅうのモノを浮かせる暴走サイコキネシスは、もちろん夏樹と委員長のスカートもしっかりめくった。
夏樹は白でワンポイント赤リボン。
委員長がまさかの黒でシースルー。
「やンッどうなってんのよ、これっ」
「席を外させていただきま、ちぇき」
夏樹がスマホで自分と心羽を撮影して転移せしめる。
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