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二人が住んでいるアパートに到着した。
老朽化した同じ造りの一戸建ての家が並んでいる。
二人が住んでいる家は特定出来ているから、問題はない。
それと、二人が留守なのは分かっている。敢えて、その時間帯を狙った。
その辺も事前にしっかりと調べておいたからね。
私の狙いは隣の家だ!
隣の家に近づくと、圧倒的な険悪感を含んだ空気が漂っているのを感じる。
ろくでもない人間が住んでいる所はそんなものだ。空気にすら悪影響を与えてしまうのかもしれない。
家の前に一人の女の子が座り込んでいる。
表情はかなり暗い。
人差し指で地面に何回も円を描くような動きを繰り返している。
「お嬢ちゃん。どうしたのかな」
私は笑みを浮かべて話しかけてみる。
女の子は顔を上げるが、表情は暗いままだ。目にも生気が感じられず、微笑む事すら忘れ去ってしまった感じが見受けられる。
「お嬢ちゃん。少しお話しようか」
私は女の子に手を差し伸べる。
女の子は暫く私をじっと見つめている。何かを訴えたいけど、人を信じる事が出来ないような視線が突き刺さってくる。
私は笑みを崩さす、女の子を優しく見つめ続ける。
女の子は手を伸ばし、私の手をようやく握り締めた。
私は女の子を家から少し離れた所に連れて行く。
ボロボロになった服の隙間から、殴られた後にできる痣が見えた。
「お嬢ちゃんは幾つかな」
言葉ではなく、手で4歳と告げる。身体の大きさからして、4歳には見えないし、体型もかなりやせ細っている。食事もろくに与えられていない感じだ。暴力の上に放置もあったみたいだね。
医者に見せれば、明らかになるだろう。
「お嬢ちゃん。暫くここにいてくれないかな。用事を思い出しちゃった。直ぐに戻ってくるから。約束だよ」
頭を撫でたら、女の子は無表情ではあったが、小さく頷いた。
私は女の子が住んでいる家を睨み、家へと向かって行く。
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