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私は警察署の裏側の出口を見張っている。
入口は表通り沿いから直ぐの所にあるから、人目についてしまう。いくら私が、日常に溶け込み易いからと言って、ずっと同じ場所で、警察署の入口を見張っていたら、怪しまれてしまう。
裏口なら、人通りの少ない路地から見張ることが出来る。
目立たないだろう。
それに、裏の出口から出る時の方が、一人の可能性は高いよね。
日が差す事のない裏通りの空気は冷やりとする。
私は電柱の陰に隠れ、沖田が出てくるのを待つ。
いつの間にか夕方になっていた。
物事に集中していると、時間の経過ですら感じなくなってしまう。
どうしよう。
夜になる前に帰らなきゃいけない。久留須との約束がある。
仕方がない。
今日は諦めるしかないかな。
そんな思いが過った時、沖田が出口から出てきた。
一人だ。
狙うしかない。
沖田は警察署を出て、裏通りの狭い路地を歩き始める。
私はある程度の距離を保ちながら、後をつける。
気づかれていないよね。
見つかってしまったら終わりだ。
慎重に事を進めないといけない。
それにしても、沖田の歩くリズムは不安定だ。一定のリズムで歩いていない。時々、止まって、お店らしき建物を眺めている。シャッターが閉まっているのに……。
沖田はブティックの前で動きを止めた。
ショーウインドーをじっと眺めている。
お洒落とは縁が無いように感じたけど、そんな事はないか。
モデルさんのような感じだからね。
改めて、通りの影から沖田を見つめる。スタイルはモデルみたいに見えるけど、鞭のようなしなやかさと強さを感じる。顔だって、しっかりとメイクをすれば、多くの男性が虜になってしまうだろう。
自分を飾らないのは仕事柄なのかな。
私は一旦この通りから、別の通りへと入っていく。
この狭い路地を道なりに通り抜けていけば、ブティックの正面に出る。
沖田の背後を突くことができる。
私は狭い通りを歩き、暗くなっていく景色の中で、緊張感に満たされていく。
狭い路地を通り抜け、ブティックが視界に飛び込んでいる。
沖田はショーウインドーに飾られている服に集中している。
チャンスだ!
くたばれ沖田!
私は沖田の背中を狙い、ナイフを右手に握り、静かに潜行をするかのように接近をして、ナイフを沖田の背中に突き刺す!
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