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回想
麻薬の取引現場を抑える仕事を依頼された。
ヘルプ程度の役割だった。
相手も考えたな。敢えて人通りの多い街中で堂々とやるとはね。影でコソコソやるよりかは怪しまれないとでも考えたのだろうか。
私は華やかな表通りから薄暗い路地裏へと繋がる通路口に立っていた。
ヘルプだからね。万が一ってとこだよね。要は逃げ道を塞いでいるだけの存在ってこと。重要な拠点は麻薬担当がきっちりと抑えている訳だったけど……。
現場全体が見渡せる良い場所だったから文句は言わなかった。
暫くそこに立っていたら、アタッシュケースを持った奴が不意に現れた。
間抜けな担当官がアタッシュケースを持った奴の動きに合わせるかのように動き出してしまった。
見て見ぬふりをして動向を伺うくらいの動きで良いだろうが。
他の仲間に気が付かれるだろう。
こういう時に限って嫌な予感はしっかりと当たってくれる。
サングラスをかけた仲間の一人が、麻薬の担当刑事に気が付き、いきなり発砲してきやがった。
刑事の一人が倒れる。
広い通りを、アタッシュケースを持った奴が駆け抜けようとする。
私は瞬時に横から身体をぶつけて、そいつを弾き飛ばす。
二人の仲間の拳銃が私に向けられる。
響く銃撃音。
跳ね上がり、身体を空中で真っ直ぐにして回転させ、落下と同時に路上を転がり、何とか銃撃を逃れる。
上体を瞬時に起こし、銃を構え、私を狙った馬鹿な二人に鉛玉をぶち込む。
二人を倒した後、他の奴らの拳銃が私を狙う。
身体を転がして、通りの脇に止まっていた車の傍に隠れる。
弾丸が車を派手に傷つけていく。
通りの中央に落ちていたアタッシュケースに気付く。
車に身体を隠した状態で、アタッシュケースを狙い弾丸を叩き込む。
アタッシュケースが勢いよく開き、白い粉が散乱する。
敵の一人が慌ててアタッシュケースを回収しようとする。
思った通りの動きにニヤリと笑い、そいつを狙い撃ちして一発で倒す。
他の担当官達が銃撃戦の体勢にようやく入ってきた。
遅すぎる反応だな。
思わず笑みが毀れてしまう。
一人のごつい男が一人の若い女性の首の辺りを左腕で抑え、銃をその女性のこめかみに当てて、通りの中央に出てきた。
「おい!車に隠れている腰抜けの女刑事。出てこい!」
私のことか。
「さっさと出てこい!この女を殺すぞ!」
私に出てこいとはね。
私を潰せば何とかなると思っているとは……。
麻薬担当の刑事さん達も舐められたものだね。
私は笑みを浮かべ、銃を犯人に向けた状態で車から姿を現す。
「銃を捨てろ!この女を殺すぞ!」
「銃を持っている私が怖い」
厭らしい笑みを浮かべる。
「テメー。俺は本気だぞ」
「貴方の本気を見てみたいわね。私を見て震えている貴方の」
私の嫌らしい笑みが影を潜めることはない。
「テッ、テメー!」
男の拳銃が若い女性のこめかみを離れる。
同時に私の拳銃が静寂を打ち破り、私が放つ銃弾が男の脳天を打ち抜く。
倒れかけようとしている女性に向かって走り出す。
女性を抱きしめ、押し倒し、路上を転がり、脇に止めてあった別の車の所に行く。
隠れていた他の仲間からの一斉射撃。
弾丸が私達の近くに次々と着弾する。
何とか車の影に隠れ、最低限の安全を確保する。
犯人達は私達に一斉射撃を加えるために、隠れていた場所から一斉に飛び出していた。
流石、その状態なら麻薬担当の刑事さん達でも何とかなるでしょう。
最も、女性がかなり震えていたからね。
可哀そうだから傍にいて、抱き締めて上げていたから、後は他の刑事さん達に任せることにしたけどね。
その後は……。
非難の嵐だったな~。
私は負傷したことにされて、暫く病院に閉じ込められていたからね。
さてと……。
私に報告書の作成は向いていない。
昨日の殺人事件の調査に取り掛かりますかね。
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