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机の上に両脚を放り投げ、ふんぞり返っていたら、杉山が険しい表情を浮かべて、私に近づいてきた。
「沖田さん。今回だけですよ。これでこの前の件はなかったことでお願いしますよ」
杉山は例の資料を叩きつける感じで私の机の上に置いた。
「安心しろ。約束は守るから」
私の言葉を聞かずに杉山はいなくなった。
資料に目を通し始める。
類似と言うよりかは、全く同じ内容だ。
二つの殺人事件が立て続けに起きているが、犯行方法の違いから、連続殺人事件として扱っていない。別々の事件として追っている。警察側の状況まで一緒になっている。笑えるな。
しかも被害者の条件も一緒だ。人間のクズのような奴らだ。しかも、子供を虐待していたことも一緒だ。それだけではない。子供が無事だったという事も。
同一犯の可能性が高いな。
犯人は複数と見て間違いないだろう。
殺害方法が違うから、殺害を行っている犯人だけで二人はいることになる。
それと……。
突発的な犯行ではない。
かなり計画的に行っている。
恐らく被害者の事をかなりよく調べている節がある。
また、子供が無事だった点はどういうことか?
子供が部屋からいなくなるタイミングを狙った?
子供が犯人達の計画に沿って動いてくれる保証はないだろう。
犯人達は被害者達の近くにいたのか。
怪しまれないか?
しかも、怪しい人間を見たと言う目撃者がいないのはどういうことだ。
色々な疑問点が次々と頭の中に泡のように浮かんでは、曖昧な世界観に満ちた憶測を創り上げていく。
読めない犯行動機。
面白くなってきたな。
私は一人、別行動をとらせてもらう。
犯行動機がどうであれ、犯人を逮捕しなければならないし、三回目は止めなければならない。
犯人を突き止めるには、記憶の中に刻まれていく疑問点を一つ一つ潰していくしかないからね……。
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