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ストレス相談
かったるいな……。
上からの命令で、今日の午後はストレス相談を受けなければならない。
ストレス相談が終わったら帰って、トレーニングでもするか。
席を立つ。
「沖田さん。今日も単独捜査ですか」
杉山の怠い声が否応なしに耳に入ってくる。
「ストレス相談だよ」
不愛想に荒っぽい感じで答える。
「ストレスが溜まっているようには見えないですよ」
「こう見えても、結構デリケートなんだけどな」
「バリケードの間違いでは」
杉山のくだらない返答に思わずイラッとしてしまう。
「今度、くだらない事を言ったら、脳味噌ぶちまけるぞ」
「相変わらず怖いね~」
杉山とのつまらない会話に嫌気がさし、私はさっさと部屋を出て、地下にある保健室のような部屋へと向かう。
歩きながら、ストレス相談の通知に目を通す。
相談をしてくれるのは、精神科医の外史 佳苗(そとふみ かなえ)先生。綺麗な女性だ。男どもで一杯になりそうな気がする。特に相談なんてする気はない。適当に話をして終わりにしよう。
そんな軽い気持ちでドアを軽くノックする。
「どうぞ。お入りください」
綺麗なのはルックスだけでなく声もか。医師になれる優秀な頭脳。天は色々な物を与えすぎてはいないか。不公平極まりないな。
ドアを開け、陰気な感じの部屋に入っていく。
無表情の私を見て、微笑む外史先生。
先生の前に重々しく椅子に座る。
「今日はよろしくお願いします。リラックスしてください。気軽に」
「そうですか。スラックスなら何時も履いていますよ」
「冗談が言えるなら大丈夫ですね」
余裕を感じさせる笑みを浮かべられてしまった。
「職場で何かあった時、気軽に相談を出来る人とかいますか」
「特にいないですね。何かあっても、自分で切り抜けますので」
「そうですか。それは、職場が男性が多いと言うところからですか」
「いえ、その辺は意識していないので。頼りにならない人ばかりだからですかね」
少しにやけて見せる。
「仕事も時にはかなり激しいですよね。男性並みのものを求められたりしませんか」
「刑事ですからね。その辺は気にしませんよ。身体も鍛えていますので」
「男性との差はあるでしょう。限界を感じたりはしませんか」
「感じませんね」
返答が雑になってくる。
「もういいですか。他にやらなければならない事がたくさんありますので」
もういいだろう。シャットアウトだ。外史先生には申し訳ないけど。
私を相手にするより、他の刑事さん達をやって上げた方が先生も張り合いがあるでしょう。
「待って。もっとお話ししませんか。何故、このような激務を選んだのか教えてもらえないかしら」
立ち上がろうとしたら、質問が飛んできた。
「テレビドラマで見て、やってみたくなったからですよ。拳銃も撃ってみたかったし」
幼稚な回答を返してみる。
「理想と現実にギャップを感じたりしませんか」
「特に理想はなかったので大丈夫です。もういいですか」
言葉と同時に立ち上がる。
声を再びかけられたが、私は無視をして部屋を出て行った。
私にはやらなければならないことがあるから……。
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