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警察のデータを確認していたら、春奈と久留須の二人の名前が出てきた。
二人とも警察のお世話になったことがある訳だ。
当時、話題となっていた連続殺人事件の被害者としてだけどね。
しかも、境遇が一緒なところにも驚いた。
二人とも親から虐待を受けていて、親を殺されていると言う点だ。
犯人は逮捕されて、死刑を執行されていた。
七人も殺せば当然だよね。
ある意味、連続殺人犯に救われたと言う訳か。
それだけじゃない。
この犯人も狙ったのは、子供を虐待していた親達だったのだ。
犯行動機は「不幸な子供たちを幸せに導くため」となっている。
そう言えば、犯人像について、色々な憶測が世間を賑わしていた記憶がある。かなり凄惨な事件だったが、内容によっては犯行を美化していたような記事まで見受けられたような気がする。
世間では、虐待を受けている子供達を救う最善策だ。なんて事も叫ばれていた。
同情をされるような被害者でなかった事も一因したのだろう。
また、犯人については、逮捕後は常にニヤニヤしていて、薄気味悪い雰囲気を醸し出し続け、意味不明な言動が目立ったこともあり、精神鑑定にもかけられていた。
春奈と久留須の接点を調べる必要があるな。
もし、二人の犯行が同じ動機によるものだとしたら……。
この犯行動機はどうやって承継された?
二人と犯人との接点があったのだろうか。
あり得ないだろう。
被害者の家族が加害者との接見は考えられない。
しかし、犯人との接見がなくても、報道内容に目を通すことは出来る。犯行を美化したクズな報道内容に、脆弱な思考回路が踊らされてしまったことも考えられるのだ。
私達と同じ境遇に遭っている子供達を、速やかに救い出してあげることこそ、私達の使命なのだという、危険極まりない発想に辿り着いてしまっているとしたら。
これこそ、虐待を受けていた子供達が無事だったと言う点に納得がいく犯行動機だが、 自分達のやっていることに、一切の罪の意識は持っていないだろう。
止めなければいけない。
だが、先ずは二人の経緯を調べる必要もある。
他にも調べる事はあるな。
一つずつ調べて、疑問点を潰していき、憶測を揺らぐことのない結論へと導かなければいけない。
結局、過去が眠る事はないということか。
ワクワクしてきたね。
楽しくなってきたこの瞬間に、私は厭らしい笑みを浮かべる。
この楽しみが、やりがいと言うやつですよ。
外史先生……。
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