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プロローグ
「沖田。この前の事件の報告書。まだか。さっさと出せ」
上司から報告書の提出が急かされる。
糞だな。
そんな物を書いている暇に、事件は容赦なく起こっているだろうが。こっちの都合なんて、考えてはくれないからね。
「沖田さん。速く書いた方がいいですよ。銃撃戦かまして、二人を殺害。二人に重傷を負わせたって書けば終わりでしょう」
隣から、杉山が、椅子に座った状態で近づき、つまらない事を話しかけてきた。
「事件の顛末を良く知っているな。私に代わって、かいてくれよ」
突き放すかのように言い返す。
「ご冗談を。やった人間にしか書けないでしょう。それ。俺が出来る事としたら、沖田さんをギネスに申請をすることくらいですかね。最も犯人を殺した刑事として」
最後の一言が気に入らねえ。
「くだらねえ事、言ってる暇があったら、昨日の殺人事件の捜査にさっさと行けよ。それと、そんな糞みたいな申請をしたら、頭を叩き割るからな」
睨みを利かせて、敢えてクールな感じで言い返す。
「相変わらず怖いですね~」
杉山は私から離れるが、パソコンの画面を食い入るように眺め、席を立とうとはしない。
やる気がないのだろう。ゴミ溜めの中に埋もれているのが、お似合いの奴だが、出世には拘っている。
私は沖田 えりな。(おきた えりな)刑事をやっている。
報告書を眺めながら、この前の銃撃戦の映像が頭の中に蘇ってくる。
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