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夢屋。
眠っている時に見る夢を取り扱う、不思議な店。
世界中探したって、こんな店他には無いと思う。あったらびっくりだ。
夢を手放したい人から夢を買い取り、夢を求めている人にそれらを売る。
霞家の人間たちは、代々受け継がれてきた「夢を出し入れできる力」を使って、そんな仕事をしてきた。
わくわくするような、楽しい夢が見たいというお客さん。過去のトラウマを思い出してしまう夢を買い取ってほしいというお客さん。夢屋には、色んな人がやって来る。時には、「夢占いをしてほしい」とか、「予知夢を見る方法を教えてほしい」なんてことを言う人も来ることがある。夢占いは想夜の専門外だし、予知夢をどうやって見ればいいかなんて、無茶な質問だ。それでも〝店主〟でいる間、想夜は店に訪れる人々の話を丁寧に聞く。たとえ、それが全く利益に繋がらなかったとしても。
その積み重ねで、今の「夢屋」が存在している。
ボクは楽しそうに話す想夜と達朗の姿を眺めた。久しぶりに会った親友同士、話題が尽きない様子だ。本当は早くご飯を食べたいけれど、今は待っていてあげよう。ボクは良くできた看板猫だからね。
……そう、思ったんだけど。
入口には、申し訳なさそうに店の中を覗いている女の人の姿。彼女は、数少ないこの店の常連さんだ。来るのは決まってこの時間だ。
想夜は目を細めると、店主の顔になって言う。
「どうぞ。中にお入り下さい」
――今日も夢屋は、商店街の片隅で慎ましく営業している。
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