2人が本棚に入れています
本棚に追加
遺書の下書き
今年も後十時間経てば終わる。
数年ぶりに一人で迎える年末、
壁面カビだらけの煙草臭い角部屋の
大掃除をしていた。
この部屋には感謝している。
この家に引っ越してからの5年間、
中身のない空っぽな毎日を過ごす私を
迎えてくれる唯一の居場所だったからだ。
白を基調としたシンプルな部屋には明らかに
ミスマッチなビビットな赤とマスタード色の洋服タンス、
いつから使っているのか思い出せない
年季が入り落書きだらけの勉強机、
この部屋で私の定位置にあたる、
やけに大きなキングサイズの茶色いベッド。
変わったものは置かれていない。
だが、改めて見てみると色調や家具のサイズ感
にあまりにも統一感がなく、違和感がそこらじゅうに感じられる空間を見渡し
私は可笑しくなって小さく笑った。
最初のコメントを投稿しよう!