遺書の下書き

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ノートに何も書くことを見つけられなかった私はとりあえず生きてみることにした。 そこに理由は無い。 このノートを作った日から何年経っただろう。 現実は何も変わっていない。 未だに死にたいとは思っている。 ただ死ぬのが怖いとも思っている。 そこに理由は無い。 でも、この瞬間 私にやりたいことが見つかった。 生きるということ。 そしてこのノートを完成させたら死ぬということ。 死ぬ理由を探す為。 それが私の生きる理由なんだ。 自分でも意味がわからない。 日本語のスペシャリストである国語の先生にも 理解はして貰えないだろう。 だが、初めて自分の中で芽生えた 私自身を突き動かす 「理由」なのだ。 この感情を、大事にしたい。 私は近くのコンビニに走った。 黒のボールペンを買った。 帰るなりすぐに机に向かい、 ノートの表紙の二文字に少し筆を加えた。 「楽しみだな。」 外を見ると月が綺麗に光っていた。
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