遺書の下書き

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やり場のない気持ちが募るまま、さらに片付けを続けた。 大半がガラクタや必要のない紙切れでしか無かったので、引き出しにだいぶ余裕が生まれた。 やっと底が見えてきた頃、 またしても見覚えのあるものを発掘した。 褐色の表紙のチープなリングノート。 今は無い、近所のスーパーで買ったものだ。 私はそれを取り出した。 表紙には覇気が感じられない 細々とした文字で 「遺書」 そう綴られていた。 さっきまでのもやもやとした何かが 何も無かったかのように消え去り 強ばっていた顔が綻んでいくのを感じた。 「懐かしいな。」
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