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新年の初湯♨️
ハァ〜初湯だぁ〜初湯だぁ〜ほれほれ!
今日はお正月の明け睦ってよりもうこれっぱかし前刻になります。
達磨長屋の留っ子と三公が湯屋の二軒先から三尺を解いてやって来ました。
耳には二文を入れて早速とやって来ました。
もう湯屋に入る頃に気が短い江戸っ子はもう素っ裸です。
「あっ・・おはようござんす・・ってあけましておめでとうでござんす、ご隠居・・流石に朝一番風呂には年寄りには敵わなねぇ〜!」
「おお〜い三公よぉ〜何をやってやがるまだ三尺を解いてねぇのかぁ?」
「おおっ悪りぃ悪りぃ・・で・・湯の塩梅はどうだ?」
「馬鹿野郎先にご隠居に新年のご挨拶をせんかぁ!」
「あっこれはこれはご隠居新年あけましておめでとうでござんす!」
と・・言いつつ留っ子が湯に足を入れたらぁ〜!
☆グァ〜〜熱いぃぃ〜!
その横で三公も湯に足を入れたらぁ〜!
☆ビェ〜〜煮立っているぅ〜!!
そんな二人を見て・・ご隠居がぁ〜!
「なんでぇぇこれっぱかしの湯にその苦虫顔わぁ!
おめぇ達とて江戸っ子神田の職人がぁ〜あゝ情けない!」
「グッグッ嫌々ご隠居・・あまりにもぬる湯で呆れていたんでげす!・・なぁ三公!」
「おおよぉ〜あゝぬる湯・・こんなぬるま湯なんざぁ〜初湯には逆にあわねぇってもんだぁ〜風邪を引いてぇしまうぜぇ!」
「・・どうでぇ三公・・一二の三でどっぷりぬる湯にってことで!」
威勢良く・・って言うより清水の舞台が飛び降りる・・決死隊の覚悟!
「ほれヒのフのミぃぃ〜!」
☆グッ・・ゲッ・・!!
「グァ〜嗚呼ぬる湯・・あゝぬる湯過ぎて声も出てしまう!」
「留っ子・・喋るなぁ身体を動かすなぁ〜湯がぬる過ぎてぇ・・身体がぁ〜痛っ・・いんやぁ風邪を引いてしまうってぇ!」
「そう言う三公も湯の中で俺に話しかけるなぁ〜振り向くなぁ〜グッグッ!!」
「だからぁ〜身体を動かすんじゃねぇって!」
「テメェこそ尻を掻くんじゃねぇって・・湯が尚更ぬるくなるって!」
☆グッ・・グァ〜・・熱い熱すぎるぅ!
「ブハァ〜グァ〜ハァハァあゝぬる湯だぜぇ!」
「あゝもう喋ると身体が動いて・・湯をかき混ぜてぇ〜・・ドンドンぬる湯になるからぁ!!」
二人はあまりにも熱い湯に気が遠くなるほどです・・でも江戸っ子神田の職人・・年寄りのご隠居が出るまで・・気が遠く霞む眼を必死に堪えております。
「おおそうだ俺から二人に正月のご馳走をしてやろうとて!」ご隠居が二人に言います。
あゝやっと地獄の釜湯から出れる二人!
続けてご隠居が言います。
「今度開業した山灸に連れて行ってやるぞ!
江戸一番の灸・・どうでぇ!」
☆「あの相撲取りも逃げ出す山盛りの灸・・下手したら骨まで焦がす灸・・!」
もちろん強がりと粋が一番の神田っ子の職人は断ってはいけないのであります!
そんな二人を見て身体中に湯蛸ができて居るご隠居のお正月の唯一の楽しみでした。
『♪町内隠居の憎まれ者があつ湯好き♪』
ー新年あけましておめでとうござんすー
・・現在の五十度はあったそうです♨️
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