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綺麗な星を見られる場所は実際に下調べをしていたから、複雑な道であっても、ルートは完璧に把握していた。そして、その場所から見られる星は、いろいろな危険を忘れさせてくれるくらい綺麗なことも、あらかじめきちんと確認済みである。少し道は険しいから、草原くん(仮)が途中で歩くのが面倒になって、登るのをやめてしまったらどうしようかと心配だった。だから、わたしは途中で進むのをやめられないように彼の手を繋いでおいた。 険しい山道で手を繋ぐことは少し不自然かもしれないと思ったけれど、草原くん(仮)は何の疑いも持っていないようでホッとする。目的の場所が整備された頂上ではなく柵も何もない中途半端な位置にある危ない場所であっても草原くん(仮)はとくに違和感を持つことも無さそうだった。 「ここから見られる星空がとても綺麗なんだ」 わたしがそう言うと、草原くん(仮)は笑顔で頷いた。 「ほんとだな。良い場所知ってるんだな」 「うん、いつか草原くんと一緒に見に行きたいって思ってたから……」 彼が草原くん本人なのかそれとも偽物なのかはよくわからないけれど、とりあえず無事に一緒にここにくることはできた。目的はもうすぐ果たされる。
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