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「お、やった。大儲けじゃねえのか?」
中にはぱっと見で1万円札が3枚以上と、少し重めの小銭、そしてカード類も入っている。
「大儲けなんて言ってる場合じゃないだろ。さすがにこれは返さないと。幸い保険証もあるし、身元もわかる。うちの大学の学生のものらしいから、さっさと学務に届けてあげたほうが良い」
「いや、せっかく財布が出てきたんだぞ? こんだけ金が入ってるんだから、貰っておこうぜ」
「ダメに決まってるだろ!」
峯野の面倒な注意を聞いていると、またポケットに何かが入る。
「なんだよ、次から次に」
今度は薄い紙切れみたいだから、外からはわからなかった。
『財布を受け取った方がいるのなら、瑛美椎大学の学務室に本日の17時までに必ず返すようにしてください』
「なんか書いてあったのか?」
峯野に尋ねられたけれど、こんなメモ見せたらまた面倒なお説教が始まってしまう。
「何も書いてない。ただのルーズリーフの切れ端だよ」
さっと丸めてゴミ箱に捨てておいた。
「コインに財布にゴミに、お前のパーカーは一体どうなってるんだろうな」
峯野は呆れながらベンチから立ち上がった。
「さてと、俺はそろそろ3限の講義があるから行くぞ」
おう、と適当に手を振った。臨時収入も入ったことだし、何を買おうか考えることに夢中になりながら。
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