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学務の近くの花壇にやってきた彼女は雑草に触れていた。
「根っこがあってもいけるのかテストしてみようかな」
先ほどまでは両手のひらで挟むようにしてコインと財布を飛ばしていたけれど、今回は片手で優しく触れるみたいにして飛ばす準備をしている。
「それでは〜刮目ください! 本当にタネも仕掛けもないスーパーマジックで〜す!」
もはや手品の原型はないけれど、それでも彼女は一応マジックショーの体で進めていた。そして、力を込めた次の瞬間には、やっぱり雑草はどこかに消えていた。根っこについていた土ごとどこかに行ってしまったから、雑草のあった場所にはぽっかりと穴が空いていた。それを見て、那絵が大きく頷いた。
「なるほど、根っこがあるものを飛ばしたらこんな感じになるんだね!」
「ちょっと、この状況でなんで能力の研究ができるわけ! わたしの財布は!」
また睨みつけたら、那絵は親指を立てて、わたしにウインクをしてきた。
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