1-16サキュバスの魔王と初心な側近

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1-16サキュバスの魔王と初心な側近

「あー、あー、ちち!!」 「ああ、シオン。そうだよ、父さんだよ。可愛い君には悪いけれど、母さんを少し借りていくよ」  そう言ってティエルはシオンの頭を優しく撫でて、それから私の手をとってエスコートしてくれた。私は純白の綺麗なドレスを着ていた、ティエルはそんな私を大事に結婚式をする場所まで導いた。魔王城の大広間が結婚式場だった、そこには私たちのことを祝いたい客で溢れかえっていた。貴族だけじゃなく平民の姿も沢山あった、私たちはそうして民衆に見守られながら結婚式をはじめた。  民衆や貴族からご結婚おめでとうございますと、私たちは沢山のお祝いの言葉をかけられた。それから次々に私たちに花々が降りそそいだ、それはとても綺麗で幸せな光景だった。ティエルは私を民衆にとれらないようにしっかり抱きしめていた、そうして私はティエルに体をぴったりとくっつけて壇上に上がった、そしてこの魔国の大神官がまず話しだした。 「愛の源である神よ、私たちのすぐ傍におられる優しき神よ。この二人はその心を尽くし、全ての力を尽くして、お互いを唯一のものとして愛することを誓います。どうか愛すべき隣人である二人を、二度と離れることがないように、ここに結びあわせて光溢れる道へとお導き下さい。……それではお互いに誓いの言葉を」 「私はサキュバスのフィーネ、ティエル・ブラストを愛することを誓うわ」 「俺はティエル・ブラスト、俺の魔王フィーネを愛することを誓う」 「大神官であるカルエ・スペシアリヒトは今ここにこの二人が神の名において結ばれたことを認めます。これからの二人の一生が、いつも神の祝福で満ち溢れていますように」 「愛しているわ、ティエル」 「俺も君を愛している、フィーネ」  私とティエルはお互いに愛を誓ってキスをした、民衆が喜んで歓声を上げるのが分かった。でも私はティエルとのキスに夢中だったから、それ以上のことは分からなくなった。やがて大広間に集まった人々の間にどんどんテーブルと料理が運ばれてきた、それから楽しく騒がしい宴会が始まった。貴族や平民の区別はなく、私たちの結婚を祝う者だけがそれに参加した。 「ふふっ、ティエル。私ったらとっても幸せよ」 「ああ、フィーネ。俺だって凄く幸せだ」  それから私たちはしばらくは結婚式の会場にいたが、やがてこっそりと二人きりで抜け出した。リヒトが赤ん坊のシオンを抱きながら、私たちのことを見送ってくれた。そうして私たちは後宮の私の部屋に帰ってきた、そうしてとても激しいキスを何度も交わしあった。それに私はティエルに聞いておきたいことがあった、私も女の子だったからその言葉を聞いておきたかった。 「ティエル、私の妊娠が分かって貴方と結婚することになったけど。……あのね、……私はね」 「俺とどうか結婚してくれますか、俺の愛しいフィーネ。そうどうか俺と結婚して欲しい、この先の俺の一生を全て捧げてもいいから、どうか俺だけと結婚していてくれ。フィーネ、俺の可愛くて愛おしいサキュバス」 「ふふっ、どうしようかしらティエル。私ったら今とっても幸せなの、だから特別に貴方だけをこれから愛するって言ってしまいそう」 「いやフィーネ、君は俺だけを愛するんじゃない。可愛い娘のシオン、それに君の家族のリヒト。君は沢山の人々を愛する魔王になるだろう、でも結婚だけは俺だけとしてくれ」  私はそんな可愛いことを言ってくれるティエルの口をキスで塞いだ、そうしてそれはいつしか激しいキスになった。結婚式のドレス姿の私はベッドに押し倒されて、ティエルから激しい愛情のこもったキスと優しい愛撫を受けることになった。ティエルが私の体の奥に触れるたびに、私はとても気持ち良くなってしまい、そうしてじきにティエルのことしか考えられなくなった。 「ティエル、どうかこれからも私だけを愛してね」 「俺が愛してるのは君だけだ、フィーネ」 「それなら私も結婚するのは、特別にティエルだけにするわ」 「ああ、フィーネ。俺が今どれだけ嬉しいか分かるか」 「ふふっ、私ったらまだよく分かってないみたい」 「それじゃ、ゆっくりと教えるよ」  そうして私とティエルはまた激しく愛し合った、私は少しずつドレスを脱がされながら、ティエルに優しく体中の感じるところを愛撫された。私もティエルが感じるところにキスをしていった、そうして私の体がとろとろに溶けてしまいそうになったら、ティエルが私の体を貫いて激しく私を揺さぶった、何度も、何度もそうされて私の体は正直に喜んだ。 「ティエルったら、浮気したら許さないんだから」 「俺に君以外の女を見る意味があるのか?」 「ふふっ、そうね。そんな意味はきっとないわ、でも娘のシオンだけは特別よ」 「ああ、君に似た可愛い娘だな。でも、俺は君だけを見ていたい」 「それじゃ、シオンはリヒトに任せましょう。彼ったら、また自分だけの新しいお姫様に夢中なの」 「ははっ、それじゃ将来はリヒトが義理の息子になるかもしれないな」  そう言いながらティエルは私の体をまた激しく揺さぶった、私はシオンと繋がっている体の奥から快感の波が押し寄せて、そうしてそれに身を任せて甘いティエルを誘うような声を上げ続けた。ティエルの私の抱き方ははじめは優しかったけれど、彼も興奮してきたらじょじょに激しいものへと変わった。何度も、何度も私の体に彼は精を吐き出した、こんなことをされたら私はまた妊娠してしまうかもしれなかった。 「ティエルったら、もうシオンにきょうだいを作るつもりなの?」 「ああ、それもいいだろう」 「そうね、一人っ子じゃ寂しい思いをするかもしれないわ」 「フィーネ、君も寂しかったのか?」 「私もそうだった、兄のようなリヒトがいてくれなかったら、寂しくて死んでしまったかも」 「俺もだってそうさ、俺だってきょうだいが欲しかった。だから、沢山シオンにはきょうだいを作ってあげよう」  そして私はまた遠くない未来に妊娠することになる、シオンには沢山のきょうだいが生まれることになった。リヒトはそんな私の後宮で嬉しい悲鳴を上げていた、リヒトにとって可愛い私のこどもたちは大切な宝物だった。そんな大切なものが増えていくのだから、リヒトはその子どもたちをとても可愛がった、ただ可愛がるだけじゃなくて私に教えてくれたように、サキュバスやインキュバスとして狡猾に生きていけるようにリヒトは子どもたちを教育した。 「ねぇ、母さん。私、リヒトおじちゃんと結婚してもいい?」 「まぁ、シオンったら、あのリヒトを捕まえたの!?」 「ううん、今から捕まえるの。先に母さんの許可をとっておこうと思って」 「それじゃ、リヒトはとっても頭が良くて逃げるのが上手いわ、でも同時に貴女に甘いからさっさと捕まえてきなさい」  そうして本当にリヒトは私の家族になることになる、それは少しばかり未来のちょっと驚きの話だ。その頃には百年はあっという間に経っていて、魔国はブラスト国という名前のとおり祝福された国になっていた、弱小種族でも幸せに生きていける国に生まれ変わっていた。祝福された魔国と呼ばれた私の国は、弱者への保護制度が整っており努力さえすれば、誰にでも幸せになれる可能性が与えられた。  私はその後も多くの魔王への挑戦者と戦い勝ち続けた、時には人間の勇者さえ打ち破ってみせた。だから魔国の政治は安定してとても住みやすい国になった、そうして私は多くの民衆に愛されたが、もちろん私が一番に愛していて可愛いと思っているのはティエルだった。ティエルは浮気などする暇もないほど私を愛した、私たちはそうして二人で魔国を治め、百年をかけて素晴らしい国にしていった。 「やっぱり私、可愛いティエルを食べちゃうのが大好きだわ」 「ぼっ、僕だって君が大好きだ。フィーネ、でも今は執務中だよ!?」  これはサキュバスの魔王と初心な側近の物語、そうして愛し合って結ばれた二人は、末永くお互いを愛してとても幸せに暮らしましたとさ。
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