1-05愚か者への復讐

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1-05愚か者への復讐

「フィーネ、自信を持て。お前は最高にいかしてる女だ、この世界で一番かもしれない良い女だ」 「ふふっ、インキュバスのリヒトがそう言ってくれるなら、ちょっと私も勇気を出してみるわ」 「振られたって気にするな、お前のような魅力的な女を振る男が悪い」 「ええ、そうね。そう思うことにする、私もサキュバスだもの」 「それじゃ、この魔王城の構造を話しておくぞ」 「うん、分かった。いざという時に逃げ出すためね」  そうして私はリヒトと一緒のベッドで寝ながら、この魔王城の構造について詳しい話が聞くことができた。私が思っていたとおりにリヒトはいざという時の逃げ道、そう何か遭ったら逃げ出す方法を見つけ出していた。それにいっぱい魔王城の女性から食事をしてきたみたいだ、私にもキスをしてその女性たちの生気を分けてくれた。  私たちサキュバスやインキュバスは普通の食事でも生きていけるが、できれば他の悪魔や人間から生気を貰った方がより強くなれた。私は両親が殺されてから魔族が嫌いで、人間のことも信用できなかった。だからリヒトから私は生気を分けて貰っていた、リヒトはモテるからいつも魔族や人間から生気を吸い取って、それを私にも惜しみなく与えてくれていた。 「はははっ、あの坊やがこんな俺たちを見たら、また誤解するんじゃねぇかな」 「ああ、他の種族にとってはキスって大事なものなのね」 「そうだぜ、フィーネ。中には好きな相手でないと、決してキスをしない奴もいる」 「私たちサキュバスには挨拶のようなものだけど、ティエルに嫌われたくないから、なるべく他の人とはキスはしないようにするわ」 「本当にあの坊やが気に入ったんだな、フィーネ」 「だってティエルはとっても可愛いもの、私が可愛いものを好きだってリヒトはよく知ってるでしょ」  私は可愛いものが大好きだった、可愛らしいアクセサリーや服それにぬいぐるみなどが大好きだった。リヒトほど多くはなかったが、魔族の中には私を好きだという者もいて、私に好かれようと贈り物をしてくれた。でも大抵はそんな贈り物は大人っぽいドレスや靴それに宝石などだった、私は相手のために喜んで受け取るふりはしたが、そんな相手とは絶対に深く付き合わなかった。  私の中で可愛いものは幸福の象徴だった、私はいつもお父さんから可愛い娘だと言われていた。母も私のことを可愛いと言って、そして優しく抱きしめてくれていた。だから私は可愛いものが大好きだった、それを保護者であるリヒトもよく知っていたから、私の誕生日にはいつも可愛いものをくれていた。逆に私の保護者であるリヒトの誕生日には、彼が好みの女性と私が仲良くなって家に連れてきた。  リヒトはしっかりとした女性でも頭が良いタイプが好きだった、そんなプライドが高い女性をでろでろに甘やかすのが大好きだった。そして彼はインキュバスだから別れ方も上手かった、その女性があまりリヒトに依存し過ぎないように、それからもっとその賢さが活かせるようにそんな女性を導いた。だからリヒトは女性と別れても恨まれることはほぼ無かった、彼は私にとって理想的なインキュバスだった。 「リヒトみたいに私もティエルをでろでろに甘やかしてみたいわ、でもそれでティエルが一人で立てなくなるようじゃ駄目。それじゃ、三流のサキュバスだわ」 「それはかなり難しいぞ、フィーネ。もうあの坊やはお前に惚れてる、あんまり甘やかしたらお前を放してくれなくなるぜ」 「そうなの、それじゃ。ティエルとは慎重に付き合わなきゃ、私だって立派なサキュバスだもん」 「そうやって口をとがらせるうちはまだ子どもだな、でも本気で惚れてる相手から愛されるのも良いもんだ」 「私の母さんみたいに? 父さんだけを愛するの?」 「そうだ、お前の母さんみたいに生涯、ただ一人だけ愛するってのもいいもんさ」  私はベッドでリヒトの話を聞きながらそれも良いなと思った、あのティエルという悪魔が私のことを本気で好きになって、そして私も彼のことを本気で好きになって愛し合うのだ。それはとても素敵なことに思えた、ちょっとつまみ食いみたいにティエルを食べちゃうのではなく、私の生涯をかけて愛してあげるのだ。あんなに可愛いティエルになら、私も彼に本気になれるかもしれなかった。 「おやすみ、フィーネ。良い夢を」  私はリヒトの言葉を聞きながら彼の腕の中で眠った、私の仇である魔王アヴァランシュはもういない、だから私は安心してリヒトの優しい腕の中で眠ることができた。そうして翌日からもティエルと私は公務をこなしていた、時には隙をみてティエルを抱きしめてみたり、偶に耳元で囁いてみたりして彼の真っ赤な可愛い顔を見ながら私は頑張った。そして、とうとう魔王軍の視察にいけることになった。 「フィーネ、君の仇を既に集めておいた。君が今の魔王だ、好きなように殺すといい」 「ありがとう、ティエル。この日のために大斧を持ってきたし、切れ味の鈍いナイフも用意した。さぁ、それじゃ復讐するとしましょう」  そうして集められた魔王軍には沢山の魔族がいた、その中からティエルが探し出した私の仇が軍の手前に集められていた。私はよくその男たちを観察した、確かに私の父を殺した男がいた、それに私の母を凌辱した男たちも全ていた。私は既にある程度自分たちがどうして集められたか、それを知っている男たちに向かってにっこりと笑いかけた。 「父を殺したのは貴方ね、その内臓をかきだしてあげるわ」 「ひっ!?」 「そして私の母を凌辱して殺したのは貴方たち、それだけのことをしたのだから去勢してあげるわ」 「おっ、俺たちは命令で――!?」  私はまず父を殺した悪魔を残酷に殺していった、私の父にしたようにお腹を割いてから、その内臓を取り出してあげた。その悪魔はしばらくは生きていたが、やがて激痛と失血でじわじわと死んでいった。それから私の母を凌辱した悪魔たちには、まず彼らの性器を大斧で潰し切り落としてやった。それから片目ずつナイフでえぐり出して痛みを与え、自分たちのしたことの愚かさを残った片目で死ぬまでみせつけてやった。  ティエルは私が復讐することに反対しなかった、彼はただ黙って私の復讐を見ていた。そして私の両親を殺した直接の仇がとれた、私は今度は本当の笑顔になってティエルに微笑んだ。ティエルはまだ私の村を焼いた悪魔たちが残っていると言った、私はそれでティエルに代わりに彼らの処刑を任せてみた、リヒトが魔王城で聞いてきた『血まみれティエル』という言葉の意味を知りたかった。 「それじゃあ、君の復讐の手伝いをするとしよう。それでは残された罪人ども、貴様らは豚にも劣る畜生だ。だから生きたまま豚の餌にしてやろう、それが嫌なら俺にかかってくるといい」  ティエルがそう言ったとたんに武器を取り上げれらていた罪人たちが、全員で一斉にティエルに向かって襲い掛かった。でもティエルはとても冷静にその罪人たちを残酷に、失血死しない程度に次々と手足を切り落として彼らを地面に這いつくばらせた。罪人たちの血しぶきが舞って、あっという間にティエルは血まみれになった。  私はそんなティエルのことがまた気に入った、彼は私の故郷を焼いた罪人どもを無慈悲に殺してくれた。彼らはまだ生きていて本当に豚の餌になることになった、その豚たちは食欲旺盛で悲鳴を上げる罪人を喜んで食べていった。ティエルはいつもの私に向けるような可愛い顔を見せなかった、確かにこうして罪人を裁くティエルは血まみれで同時にとても美しかった。 「ティエル、私は貴方のことがますます気に入ったわ」
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