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前奏曲
「冴香ちゃん、今日あたし宛に大きめの荷物が届くと思うの、その…楽器が…」
パジャマ姿から平服…カフェ美宙の制服に着替えつつある秋ちゃんがそう話しかけてきた
別に強要したワケではないのだが、秋ちゃんはカフェのホールスタッフを買って出てくれている。しかも嬉しそうに…相変わらず謎の多い人だ
悔しいことに美人さんだから、美優ちゃんと並んで看板娘と呼ばれているらしい
パジャマとは言ってもここ南国の地だから?何処ぞの旅館で着心地が気に入って買ったらしい浴衣ではあるが
…柄が幾つもあるのは秋ちゃんが演奏旅行に行っているからだろう…間違っても温泉旅行三昧の人生を歩んで来たワケでも黙って持って帰って来たワケではないだろう…たぶん
朝ご飯の洗い物からの流れで今日の分の食材の仕込み全部を描さんがしてくれているから、私達女子チームがメイクや着替えに興じる事が出来ている事に感謝しないと!
あ、そんなの訳ないですよ、カフェの食材から裏稼業の道具まで、今日は色々届く予定ですから
…部屋はあり余っているし、そのお陰で?一部屋を秋ちゃんの仕事部屋にしているのだが、何故か寝泊まりは私、北村冴香と一緒にしてくれているのはこれまた謎だ
片付けが苦手だかららしいけど
…描さんの今カノと元カノが同室でって…美優ちゃんは心配してくれていたが、後の三人は特段気にしている風もないのはなんだかなぁ
見張られてるのかとも思ったが…ほぼほぼ先に秋ちゃんが寝息を立てておられるので、それは違うと思うのだが
「あたし免許持ってないから、ごめんね?」
…これは正真正銘意外で、カフェ美宙での立居振舞を拝見する限り、自立した、何でもできるオトナのオンナにしか見えないこの人が無免許とは…
まあ、御本人曰く、当時は女性で免許を取得する事自体が珍しかったからだそう
ここに越してきた当初は描さんと私だけだった運転免許証保持者も、今やハルちゃんとシイちゃんが加わってくれたので、何かと安心!
あ、いや、あの足音も衣摺れの音も立てないウェイトレスと言うのもアレだが…
秋ちゃん、大船に乗ったつもりでいてください!ちゃんと引き取って来ますから!ドーンとお任せを!
「そ、そう?一応お願いしておくと、丁寧にしてもらえると嬉しいかな〜?」
…何が届くのやら…秋ちゃん宛の荷物は幾つか受け取ったけど、ここまで頼まれるなんて…
億単位のストラディバリか何かなんだろうか…
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