1人が本棚に入れています
本棚に追加
トラブルは秋ちゃんの叫びとともに
「あんぎゃーーーーーーーー!!!!!!!」
静かなカフェ美宙の居住エリアから秋ちゃんの叫び声が響いたのは、描さん含む全員がお風呂を済ませた後、日付が変わるか変わらないか、そんな時
因みに今日の秋ちゃんは〆切に間に合わないからとシャワーで済ませていた
まあそのお陰で?私は久しぶりに一人ゆったりと湯槽を満喫させてもらえたのだが
いや、今の叫び声は…秋ちゃんの身に何かあったからに違いない!
私は愛用のМ&Pにいつもの非殺傷弾を詰めて、部屋から飛び出した
秋ちゃんの身に何かあったら、何より描さんに顔向け出来ないから!
途中優花ちゃんと美優ちゃんの部屋の前を通る際、部屋から出ないように一声かけたが
優花ちゃんは兎も角、美優ちゃんは秋ちゃんと同じ一般人だから最悪の場合を想定して、だ
私と同様、ハルちゃんとシイちゃんも部屋から飛び出して来た
廊下にシイちゃんが寝そべり、その脇に膝立ちのハルちゃんが、それぞれに得物を構えているのが見えた
私達の銃口が睨めつける先は、悲鳴の上がった秋ちゃんの仕事部屋方向
ハルちゃんが頷き、2人が同時に動く
速い!
今度はハルちゃんが寝そべり、その僅か後ろからシイちゃんが銃を構えるカタチで、秋ちゃんの仕事部屋の中へ銃口を向けていた
上手い…
普通なら横並びに構えるトコロなんだろうけど、現に私達も描さんに教わるまでそうだったし
ハルちゃんとシイちゃんのコンビネーションは、「線」ではなく「面」でターゲットを狙う、より実戦的な動きだ
と、二人から緊張が解け、М686とSIG320にセーフティが同時に掛けられた
どうやら秋ちゃんに何かあったワケではなさそうなのは良かった!
信頼してくれているShoottの皆さんにも、それなら面目も立つ
私も相棒にセーフティを掛け、秋ちゃんの仕事部屋に顔だけで覗き込む
いつも通り楽器や譜面が其処彼処に置かれてはいるものの、曲者の姿も荷物が崩れた様子もない
ただ…焦燥しきった顔さえもキレイな秋ちゃんが頭を抱えているだけだ
ここで私はある違和感を感じる
何だろう…
不安だとか負の感情ではなく、何か、誰か足りないような…
「しっかし流石ししょーっすねぇ、ウチらに任せて大丈夫だって思ってくれてるんすかねぇ?秋さんの叫び声の意味がわかってて出て来ないのか…」
へ?
「本当に。さっきの秋さんの声でビクともしないなんて…流石パパ、婚約直前まで行った相手の事はよくわかってますよねぇ」
…これだ…
普段なら真っ先に廊下に出て来るような人が影も形もない…
つまり元カノの叫び声の種類を聞き分けていたのだろう
私は秋ちゃんに見つからないウチにそろそろとその場を離れ、描さんの部屋を覗いてみる
いつもならピッタリ閉まっているはずの襖が微かに開いたままになっていて、月の光が一筋射し込んでいた
…居ない…
布団に手を当てる
仄かに暖かい…
まだそう遠くには行っていないはず!
ん?よく見るとギターも見当たらないけど…
あれ?ハイキャパは置いてある…
さっきのハルちゃんとシイちゃんの会話が脳裡に甦る
要するに…逃げたな…
最初のコメントを投稿しよう!