トラブルは秋ちゃんの叫びとともに

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我が家からプライベートビーチへ続く、椰子の木立は敢えて砂地にしてある これは描さんの受け売りだけど… 「砂を食む足音は、中々消せないモノなんですよ?僕も含めて、ね」 だそうで、防犯の意味も込めてだとか 縁側から海に向かって、一組の足跡とその右側に丸い跡が続いている この足跡の横の丸い跡、間違いなく描さんの杖のものだ… しかし…危険予知に秀でていると言うか…逃げ足が速いと言うか…いやはや、私達の想い人は… どうせ足音は消せないんだし、私は浴衣の腰にМ&Pを捩じ込んで、描さんの足跡を、わざと音を立てながら追い掛けた 勿論、周囲への警戒は最低限怠りはしないけど ただ世界一と呼ばれる描さんが通った後だ、そんなの杞憂に過ぎないんだろうけど 木立を進むこと少々、目的の人をはっけーん 浜辺に面した、ベンチ代わりに設置したらしい石に腰掛けてギターを爪弾いている後ろ姿… 月明かりと星明かりに照らし出されたその姿と言ったら…もう、惚れ直す以外の選択肢にない! 何よ、悪い? 「…さすが冴香さん、もう見つかっちゃいましたか〜」 石の上に無造作に置かれたハイキャパに手を伸ばす素振りもなく、こちらを一度も振り返らないのに、何故か私の接近に気付かれていた… この人にはスキはないのか?今度秋ちゃんに聞いてみよう 「あの…僕がいくらボンヤリしているからって、恋人の気配とか足音、香りがわからないほどはボケてないつもりなんですが…」 おまけにこちらの思惑までお見通しとは… オリヴィアが理由のわからない縁談を押し付けられて訪ねて来た理由が何となく、あくまでも何となくですよ、わかった気がする… 「一応確認しますが、秋ちゃんは無事だったでしょう?あれは…カバーアルバムのネタに詰まったからじゃないかと思うんですが…」 そこまで見抜くなんて… ちょっと、本当にちょっとだけよ?、秋ちゃんが羨ましくなった… あの悲鳴だけで理解されるなんて、いくら元婚約者とは言え、ねぇ… このビミョーな乙女心、この人には一生わかってもらえないんだろうなあ 「その点冴香さんは物静かでお淑やかですからねぇ、他の面子にも見習ってほしいモノです…冴香さんのマナー教室みたいな?ついでに料理教室も優花ちゃんと美優ちゃん限定で開講してほしいくらいですよ?」 わ、わ、私は別に物静かでもお淑やかでもない、一般家庭育ちですから! 大慌てで否定してはみるものの、嬉しいことには違いがない と、描さんの前にイーゼル?譜面台?が置いてある事に気が付いた しかもかなり分厚い紙の束だ、例えるなら…秋ちゃんの仕事部屋に積み上げられている内のひとつくらいはある 描さん、それは? 「これ?トモチからの手紙の追伸で、十中八九秋ちゃんが行き詰まるだろうから、そのフォロー用にアルバム収録候補の譜面で練習しておけって」 僕はミュージシャンじゃなくて、カフェの店員なんですけどねぇ 月明かりの下、私の大切な人は苦笑いしてそう解説してくれた …秋ちゃんって、Shoottの皆さんからもパターン読まれてる? まあ、美人でスタイル良くて性格も良過ぎる人だ、ひとつくらい欠点があっても良いけど 読まれ過ぎなのが気にならなくもない
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