トラブルは秋ちゃんの叫びとともに

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くしゅん! 描さんを無事に見つけられて安心したからか、流石の南国も気温が下がったからなのか、思わずくしゃみが出てしまった… うぅ、いくら付き合いが長い恋人の前とは言え、恥ずかしいかも… 「冴香さん?」 隣に腰掛けている私を描さんが手招く きっと今のくしゃみを気にしてくれてる 万が一にも風邪なら…伝染すわけにも行かない…あ、でも一応ドジっ娘だけど元看護士さんがいたわね それでも身を寄せるまでしかくっつけない私に 「仕方ない恋人ですねぇ」 笑いを含んだ声でそう言われた瞬間、私の両脇に描さんの両方の腕が通され…昼間の二人羽織の体勢に抱きかかえられていた… ちょ、ちょっと、描さん?嬉しいんだけど… 「ほら、これなら少しは肌寒くないでしょ?」 そ、それはそうですけど… 昼間の同じ姿勢よりも描さんの温もりが私の背中全体に伝わって、全身に広がっていく 「そうだ、こうすれば秋ちゃんや優花ちゃん美優ちゃんに見られても言い訳が立ちますよ?」 言うが速いか、私の右肩にはストラップが掛けられ、両膝の上には…描さんのギターが乗せられていた た、確かにこれなら描さんに私がギターを教わっているように見えなくもないけど 「そうだ、トモチから頼まれた練習に一曲付き合ってくれませんか?曲は…これなんてどうです?僕のギターに冴香さんのボーカルが映えると思うんですけど」 描さんがとある一曲の譜面を指差す この曲は…嵐さんの曲の中でも、私が断トツで好きな歌詞なのだ これは…読まれている?い、一応反論を試みてみることにする え、私、プロのミュージシャンじゃあありませんけど 「僕だってそうですけど?何十年もギターに触れてなかったんですし。学祭のノリでなら如何でしょうか?」 この姿勢では…逃げられない… 私も覚悟を決めた 「ウチの娘に嵐さんのシングル曲はあらかた仕込まれてらっしゃるでしょ?僕の愛車でも何度も流してたはずですし」 論破された…と言うより、ハナから逃げ場がなかったような気がする… で、でも私こんなアップテンポナンバー歌える自信がないんですけど… 「あ、それなら僕のアコギだけだからバラード調で歌っていただけないと、僕が追いつけませんし」 た、確かに娘ちゃんからは嵐さんのシングル曲は全部カラオケやCD、歌番組で教えてもらえてはいるけど… それを描さんの前で独唱するのは…さっきのくしゃみ以上に恥ずかしいと思うのは、私がおかしいのだろうか… 「しっかしトモチめ、嵐さんとかスピッツさんとか小田さんばかり入れてるな…アニソンメドレーか何かにしてくれりゃ良いのに…」 描さんのボヤきが私の頭越しに降ってきた 私は思わず吹き出してしまった 「もう、笑わないでくださいよ~?」
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