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月夜の浜辺
「おや」
「君のうた」など三曲終えたところで、描さんがギターを爪弾くのを止めた
どうしたの?描さんも寒くなって来た?
…な、なら、もう少しくっついても、いい?
いくら付き合いが長いとは言え、こうして私の方から誘うのは、やっぱり恥ずかしいワケで…
とか思いながらも、身体は正直なもので、私の背中は益々描さんにくっついて離れられない
「ん?冴香さん寒くなって来ましたか?何なら部屋に戻してあげたいんですが…そうも行かないみたいですねぇ」
ち、違います!あ、いや、違わないんだけど…
描さんの言葉の意味を測りかねていると、何やら砂地を食む複数の足音と聞き覚えのある女の子の声が聞こえてきた
「あたしらはプロじゃないんすよ〜?」
「そうですよ、ウチらは聞く専門なんですけど」
「そんなこと言わないでハルちゃんもシイちゃんも助けてよ~?冴香ちゃんのお酒の隠し場所教えてあげるから!」
「それなら話しは別っす!あたしらに出来ることは何でもするっす!」
「ウチもさんせーい!最近飲み足りなくて寝付きが悪いんですよ〜」
「…あの、あたし達にはメリットが無いみたいなので、優花さん連れて戻っても…」
「美優ちゃんの好きな、秋ちゃん特製プリンを特大サイズで作ろうと思ったんだけど…」
「やります!優花さん、起きてください!秋さんがお困りです!プリンをご馳走してくれるそうですよ!」
…賑やかな連中だ…まあ元凶は〆切で切羽詰まってる秋ちゃんなのは間違いようがないんだけど
ところで私がお酒を隠した場所を何で秋ちゃんが知ってるんだろ…
あっという間にカフェ美宙のスタッフが私達の周りに勢揃いしていた
「ちょっとお二人さん?いくらなんでもくっつき過ぎなんじゃ、ないかな?」
むふふ〜秋ちゃん羨ましいでしょ〜?
じゃなくて!こ、これには理由が!!
「冴香さん、パパから離れないと説得力に欠けますよ…さっきまで秋さんが火事になってて大変だったんですよ?」
呆れたような言葉とは裏腹に、シイちゃんが私達の右側に腰を下ろす…
「そ、そうですよ!冴香さんばっかりズルいです!あ、あたしも猫さんにギュッとしてもらいたいです!ついでに優花さんも…」
夜目にもわかるくらい真っ赤な顔で美優ちゃんが主張してくる
でも描さんの左には座って腕は組むのね…
「美優ちゃん、もう少し緩めていただけないとギターが弾けないんですけど…」
をい、描さんも何嬉しそうにしてるんだ?あれか!ちょっとくらい平らでも、若くて可愛い女の子の方が良いってか!
「しまった、出遅れたっす!あたしもししょーをギュッとしたいっす!でも場所がないから、えいっす!!」
私の怒りを他所に、何か皆の言葉の意味を微妙に取り違えているハルちゃんが、描さんの背後から抱きついて来た
…ただ、描さん諸共、私まで抱き締めてくれてるんだけど…
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