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「こらー?皆ちょっと理性を取り戻せー?何のために秋ちゃんが冴香ちゃんとネコを捜してたのか、忘れてませんか〜?」
口に咥えタバコならぬ、棒付きキャンディーを頬張った秋ちゃんがゲラゲラ笑っている
ただでさえ甘い秋ちゃんの吐息に、更に甘いミルクの香りが混じる
余談だが秋ちゃんの仕事部屋には店売りディスプレイのままの棒付きキャンディーが、鎮座していて…時々本土のスーパーを思い出して笑ってしまう
「秋ちゃんの一生に一度のお願いなら、この前叶えたような気がするんですが…」
描さんが細やかな抵抗を試みている…
私もだけど、秋ちゃんのお願いって、何故か、断れないのよねぇ
「お♫さすがネコ!あたしからの頼み事があるってよくわかったわね!…あと一曲なのよぉ」
背中にポータブルキーボードを背負った秋ちゃんが、私達の目の前で正座している
「…この前のオフコースで秋ちゃんの割当分は完遂したんじゃなかったんですか?」
「それがさ、ヒロとトモチの奴、皆がハッピーな感じのもって言ってきたのよぉ、お願い、元婚約者を助けると思ってさ、一曲!」
…なるほど、その腹づもりもあって、今私が抱えているギターを送ってきたと…
ヒロさんにトモチさん、さすがと言うか何と言うか…
とか考えているウチに、ハルちゃんが焚火の用意を、シイちゃんが譜面台にiPadをセットし始めていた…
二人ともお酒が掛かってるから動作がいつも以上に早い!秋ちゃんに知られてるんじゃ、隠し場所を変えないとよね…
はあ、と諦めたような大きな溜め息を描さんがついた
「で?どの曲なんです?」
目の前で秋ちゃんの笑顔がパッと輝く…
「仕方ないでしょ…家賃払ってもらってるんですから…でもあくまでも僕はプロのミュージシャンじゃないんですからね?素人なんですからね?ここにいる皆だって、あくまでも歌が上手な女の子達なだけですからね?」
そうなのだ
部屋を遊ばせておくよりも、って無償で部屋を貸す予定、時々カフェの手伝いと我が家の家事手伝いをしてもらえたら、そんな条件だったんだけど
描さん曰く、少なくない金額がShoottの事務所から毎月支払われているらしい
「さっすがネコ!物分かりが良くて助かるわぁ!あたしが考えてるのはね…この曲!」
譜面台をパラパラしていた秋ちゃんが指を止めたのは…
「これ!この曲ならネコの十二弦とあたしのシンセでアコースティックな感じが出せると思うのよ」
「あ、この曲ならあたしも知ってるっす!たぶん歌えると思うっす!」
「そうねぇ…これならちょっと低めの冴香さんとウチも大丈夫かな〜?」
「あ、あたしもこの曲知ってます!嵐さんの代表曲じゃないですか!」
「…うーん…何…?」
最後のは未だ寝惚けている優花ちゃんの台詞だ
「んじゃ満場一致と言う事で!冴香ちゃん、ちょっとアレンジの打ち合わせに、こいつ借りるわね!それから美優ちゃん、優花ちゃんを起こしておいてちょうだい!さもなきゃプリンは美優ちゃんの独り占めになるからって!」
ギターを私に預けた姿勢そのままに、描さんの目の前に譜面が突き出され、いつも以上にテキパキテキパキと秋ちゃんが指示を出していく
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