転生探索者の日常

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 見渡す限り真っ白な空間。ネット小説を愛読する諸兄ならば今後の展開も予想のつくであろう光景だ。そしてその期待を違わず出現する女神様(仮)。 「(仮)は酷くないですか?」 「未確認である以上、9割9分9厘9毛女神様でも断定は出来ません」  不確定な事を下手に呟けば後程叩かれるのが現代社会である。世知辛いとは思うが自己防衛の為の努力は欠かせない。 「私はこの世界の管理者の一人。女神との認識でも支障ありません。あなたは自分の事を覚えていますか?」 「え、俺?俺は・・・」  俺は50代で社会から離脱した、ネット小説を読む事と書く事が趣味のオッサンだ。若い頃の無理が祟って腰から下に痺れと痛みが出るので、歩くにも杖が必須という状態だった。 「確か、病院でリハビリを受けて帰り道で・・・」 「解体中のパチンコ店の前を通りましたね?」  女神様の言う通り、バスを降りて潰れたパチンコ店の前を通り過ぎようとした。そこで立ち話している子供連れの母親が数人居て・・・ 「子供に崩れた看板が落ちてきて、俺は子供を押し出した」 「そうです。そして、落ちてきた『パ』の字に潰されてしまった。テンプレですね」  それを知っているという事は、女神様は携帯小説を読んでいるということ。しかも、かなりの古参の筈だ。 「察しているとは思いますが、あなたには違う世界へ記憶を持ったまま転生してもらいます。因みに拒否権はありません」 「やはりそのパターンですか。何か任務はありますか?」  抗っても無駄ならば、聞くべき事をさっさと聞いておくに限る。どれだけの情報を得られるかが今後の人生を左右するのだから。 「やってもらいたい事はダンジョンの攻略です。行ってもらうのは日露の戦役前にダンジョンが出現した世界で、歴史や技術は違う所もありますがこの世界とかなり似ています」 「生活水準がこの世界とかわらないのは助かりますね。それと、転生先で元々産まれる筈だった魂は・・・」  俺が転生しなかった場合産まれる筈だった魂はどうなるのか。知って何かを出来るかどうかは分からないが、聞かずに悶々とするよりは聞いておきたい。 「そこは心配要りません。細胞分裂が上手く行かず流れる予定の双子の受精卵を強引に一つに纏め、そこにあなたの魂をぶち込みます」 「誰かの魂を犠牲にしないのは嬉しいですけど、そんな事が出来るのですか?そして言い方ぁ!」  不敬になるのは承知の上。それでも突っ込みを入れる事を我慢できなかった。まあ、消されるなんていう事は無いだろう。・・・多分。 「そこは神の力でちよちょっとやるらしいわ。後は向こうで向こうの管理者から(会えたら)聞いて頂戴。では、一名様ごあんなーい!」 「軽いって!それに会えたらって会えなかったらどうするのさ!」  小声で言われた内容まで突っ込みを入れるも、いきなり足元に開いた穴に吸い込まれ落ちていくのだった。  
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