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私が席に着いたのを見計らって蛇守くんは再び話を始める。
「流石に僕も頭に来てさ。
のし掛かって来るババアを押し退けてから、その顔を思い切り殴り付けたんだよ。
そしたらさ、ババアの頭は首から千切れて吹っ飛んで行って、壁にダンッって当たってから床に落ちた訳だよ」
身体を紐のように細くして壁の穴を通ることが出来るくらいなのだから、ババアの身体は餅のように柔らかなのだろう。
それ故、顔を力一杯殴り付けたら首から千切れもするのだろう。
納得した私は二、三度頷く。
蛇守くんの話は続く。
「それでね、なんかもう腹が立ってしまってさ、思わずこう怒鳴り付けてしまったんだよ。
『このクソババア、もう二度と来るな!』ってね」
私は身体の芯がゾワリとするのを感じていた。
蛇守くんは学校でも、そして私の前でも物静かに振る舞っている。
声を荒げるところだなんて見たことも無い。
言葉遣いも頗る丁寧だ。
それ故か、そんな蛇守くんが声を荒げて汚い言葉を口にする様を想像すると、身体の芯からジワリジワリと熱が染み出してくるように感じられてしまった。
蛇守くんが訝しげな表情を浮かべている。
私が仄かに顔を赤らめ、潤んだような目をしているのを不思議に思っているのだろう。
私は相好を崩したままで蛇守くんへと問い掛ける。
「それから?
それからどうなったの?!」と。
蛇守くんはこう答えを返す。
「ババアは哀れにも半狂乱さ。
すっ飛んでいった頭は床に転がったままでヒィヒィ泣き叫んでいるし、身体のほうは飛んでいった頭を探しては右往左往してあちこちにぶつかるわで、もう騒がしくて騒がしくて」
私はにやけた表情のままで惨状の様を想像する。
蛇守くんは話を続ける。
「一頻り大騒ぎした後、ババアの身体がようやく頭を拾い上げて、さも大事そうに抱えながら壁の穴から出て行ったよ。
オイオイと泣き叫びながら、ね」
なるほど、といった感じに私は相槌を打つ。
けれども肝心のことに話が至っていないことに気が付き、こう疑問を口にする。
「でさ、首の千切れた紐のババアとこのお弁当ってさ、どんな関係があるのかな?」と。
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