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いっせいに、きらきら輝く目が私を捕らえてきました。
「本当?」
「すごいや!」
「お姉さん、お願いします!」
わっと盛り上がる男の子達のうち二人が私に駆け付けてきて、早く早く、と腕を引っ張っていきます。
いったいこの子達は何にこんなに夢中になっているのかと不思議に思いながら彼らの輪を覗くと、その中央にいた一人の男の子が慎重な速度で私に振り返りました。
その子はまるで石にでもなったかのように曲げた肘を固定したままで、その指先には一匹の蝶がとまっていました。
「チョウチョ……?」
あまり詳しくはありませんが、それはおそらくモンシロチョウだと思います。
その蝶を驚かせないように男の子が手を動かさずにいるのでしょうけど、少し様子がおかしくも感じました。
白い羽が、開いたまま動かないのです。
それに、いくら動かさずにいたとしても、蝶が人間の指にこんなにも長くとまっていることは不自然です。
羽も微動だにしないことからも、もしかしてこの蝶は……
「このコ、怪我してるみたいなんです」
蝶を指先にとめた男の子が、心配そうに教えてくれました。
もう片方の手をそっと立て、風よけをしながら、私に蝶を見せてくれます。
確かにその弱弱しい姿は、怪我をしているようにも見えました。
…………まさか?
私はこちらを黙って見守る男性に目で訴えました。
すると男性はコク、と小さく頷いたのです。
いえいえいえ!無理です!
私にこの蝶の怪我を治すなんてできません!
口をぱくぱくさせて声に出さずに否定したものの、
「ねえねえお姉さん、本当に治してくれるの?」
「どうやって治すんですか?」
「やっぱりこのチョウチョ、怪我してるんですか?」
「早く治してあげて!お願いします!」
期待感たっぷりの眼差しに囲まれて、とても出来ないとは言えません。
私はもう一度視線で男性に救いを求めました。
ところが男性はフォローしてくださるどころか、涼しい顔で
「お姉さんに蝶を預けてごらん」
無責任に事態を進めようとしたのです。
当然、素直な男の子は私に蝶を移そうとしてきます。
慎重に慎重に、蝶を傷付けないように優しく指を動かす男の子を無視するなんてできるわけもなく、私は成り行きで右人差し指に蝶を乗せました。
こそばゆい感覚が指先に乗り、子供の頃以来久々に触れた小さな生き物に、確かに生命を感じました。
ですがまさかこの蝶に紅茶を飲ませるわけにはいきません。
かといって、では他にどんな手段で相手を癒すのかなんて私自身にもわからないのです。
そもそも、人間以外の生き物に有効なのかも明らかではなのですから。
少しの間、困惑の時間が流れました。
私はどうしたらいいのか戸惑うばかりで蝶と男の子達を交互に見ていましたが、男の子達のわくわくしたような表情がなんとも言えず、罪悪感ばかりが増していくばかりです。
けれど、再再度男性に助けを求めようと顔を動かしたそのときでした。
「―――っ!」
ふわり………
本当にその擬音のような柔らかさで、蝶の羽がゆっくりと動いたのです。
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