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“本気”を教えて ~和~
それから三十分くらいは経っただろうか、気がつくと香帆は街中に一人取り残されていた。
最初に見失った時、すぐに見つけられるだろう、と高を括っていたのだがそれが甘かった。
翌日が休みという事で、人にぶつからずに歩く事が困難なくらい街には人が溢れていて、人を捜すどころの騒ぎではない。
気がつけば、完全に康介の姿を見失ってしまっていた。
瞬間、香帆は、これなら帰ってしまっても文句を云われる事はないだろう、と考えた。
捜しても見つからなかったのだから仕方ない……そう思い、香帆は内心でホッとした。
真面目な性格ではないが、そんなに飲みの席に積極的に参加する性格でもなく、そんな自分が“こんな”場所に連れて来られるとは……
道の真ん中で突っ立ったままの香帆を、新たに入ってくる人々が迷惑そうな眼差しを向けながら避けて行く。
そんな中、入口へと引き返しかけた……その時だった。
突然、向こうの方から大きな歓声が上った。
それはしばらくしても止む事はなく、それどころか益々大きくなっていった。
その声につられて、香帆も振り返った。
瞬く間に集まった人々による人が樹の合間から、その視線の方向を覗き込んでみる。
瞬間、香帆はその場に立ち尽くしてしまった。
「ぅ、わぁ……」
そこには、まるで映画の中のような情景が広がっていた。
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