ポケットの中の話

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ポケットの中の話

ポケットの中には何が入っていると思う? きみだよ。ほら、そこの君。君のポケットの話さ。 はは、探したって何も出てこないよ。だってそのポケットの中にはこれから誰かが入れるんだから。 嘘じゃないよ。きっと誰かが君のために入れてくれる。だから待ってておいで。その時が来るのを。 それはこれからのことなんだ。明日かもしれない。明後日かもしれない。もしかしたら何年も先かもしれない。 君は僕とこんな話をしたことすら忘れてしまうかもね。それでもいいんだ。いいんだよ。 ポケットの中には何が入っていると思う? そう、君のポケットの中だよ。まだ何も入っていない、その空っぽのポケットの中にだよ。 僕はね、そこには未来が入っていると思うんだ。 これから何を入れよう、何が入るんだろう。そう考えながら何も持っていない手を突っ込む。 そこでさ、何か掴めたら嬉しいだろう? 入れたはずのない何かがそこにあったとしたら。 入れたのは過去の話、見つけるのは未来の話。今を基準に考えたらそうなるね。うん、正解だ。よくできました。 でもそんなのつまらないじゃないか。僕ならこう考える。未来で見つける話を入れた。言いたいことは同じだよ。変わらない。ポケットに入っているものも変わらない。 飴を入れたら見つかるのは当然飴だ。ビスケットを入れたら見つかるのはビスケット。同じ物しか見つからない。 どうせ同じならちょっとワクワクしながら見つけたいだろう? 僕だったらワクワクしながら隠してワクワクしながら見つけたい。同じ物であっても、ね。 未来の君が見つける何か。それがポケットの中には入れられる。きっと。きっとだよ。 君たちはきっと手にするだろう。ほら、毎日毎日何かが足りない。 きっと君たちはこの話を思い出す。ポケットの中に未来の自分へ宛てられた何かが入れられたその瞬間に。君たちは、きっと思い出す。 だからポケットの中に手を入れて探るのを忘れないようにね。 「じゃあ、またあした」
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