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龍と石と虎と 1
2024年は辰年だから、という訳ではなく。
このタイトルだけでピンときた方は、相当な近代文学好きか、私と同じ展覧会へ行った方でしょう。
「芥川龍之介と美の世界 二人の先達─夏目漱石、菅虎雄」という展覧会へ行った感想などを、つらつらと書きます。なお、今回はくだけた文体で書きます。自分用の備忘録兼、軽~い感想なので。
で、今回のタイトルは、「芥川と漱石と菅」ってことです。
ちなみに、菅虎雄、ご存じでしょうか? 知っている!という方は、相当な近代文学オタ(ごほごほ)……もとい、近代文学好きでしょう。
漱石と芥川は、言わずと知れた近代の文豪。国語の教科書の常連です。
菅については、私はまったく存じ上げず。友人とこの展覧会の話をした際に、友人から「芥川の羅生門の題字を書いた人」と聞いて「へー」と思った程度の知識しかありませんでした。
詳しくはWikipedia等で調べてもらうといいと思います。
ざっくり説明すると、菅は漱石の2年先輩で親友。漱石の松山の職を斡旋したり、熊本に教師として呼んだりしている。元々医科に入ったが、ドイツ語がよくできたので転科。その後はドイツ語教師として晩年近くまで務めた。また、書家としての顔も持つ。芥川とは、第一高等学校時代のドイツ語の先生と生徒、というつながり。芥川卒業後も家を行き来していたりと、交流があった模様。
この展覧会、漱石と芥川の交流、そして二人にも影響を与えている菅、この三名を軸に、芥川の目を通して美術を見ていきましょう、という趣向のようです。
展示は、三名の手紙や原稿・書・絵画、芥川が言及した絵画や彫刻、その他関連美術品など、多岐に渡っていました。ちなみに、原稿は芥川の物のみ。漱石は、やりとりした手紙が中心。
二月以降は、神奈川県立近代美術館 葉山に巡回するらしいので、余計な先入観なしに鑑賞したいという方は、ここで回れ右、が賢明です。
少しスペースを入れます。
ではでは、感想をば……。
まずは、入ってすぐに、芥川の「或る阿呆の一生」の手書き原稿が展示されていて、私のテンション爆上がり(笑)。今までに文学館に行ったことがなかったので、小説家の手書き原稿を初めて見た興奮で、恐らく挙動不審な怪しい人になっていたと思います。学芸員さんすみません。
芥川の字、几帳面そうな字だなと思いました。原稿用紙のマス目の中心に小さく書かれていて、楷書で、読みやすい。
原稿に書かれた文字を書き直したり、書き足したり、線で消してたり、推敲の跡が見える。何と言うか、そこに芥川が居て、私が見ているこの原稿に向かって文字を書いて、同じようにこれを眺めていたんだと。無性に感動しました。
生原稿は他にも、「芋粥」「鼻」「歯車」「或旧友へ送る手記」等々がありましたよ。
芥川の書く文字について、アルトネというWebマガジンで学芸員さんが色々書かれていました。詳しくはそれを読んでいただくとして。
記事通り、確かに芥川は筆やペン、手紙や葉書、和紙?や、相手によってかなり文字が変わる。原稿用紙に書かれた文字も同じ印象を受けました。
原稿用紙の文字も、初期の「芋粥」「鼻」と、晩年の「歯車」「或旧友へ送る手記」「或る阿呆の一生」では印象が異なる。
初期は、文字が原稿用紙のマス目に合わせた大きさで、流れるように溢れるように書かれている。
晩年は、前述した通りマス目の中心に小さく書かれていて、読みやすい。でも何と言うか、機械的で無機質な活字に近い。文字が竦んでいるような強張っているような。初期の言葉が溢れ出してその勢いで書いている伸びやかさと比べると、言葉を絞り出している感じがして、こちらまで苦しくなる。そんな事を思いました。
ちなみに、エブリスタに投稿されている方々は、原稿用紙って使われているのでしょうか? ほとんどの方が、PC等での入力で、手書きされている方は少数派だと思います。私は半々です。たまに、手元に情報機器が無い場合もあるので、ノートに手書きもありです。
芥川の生原稿を見て、ああ手書きで残るのも良い、と思いました。苦労したところ、悩んだところが目に見えるし。
長くなってきたので、続きは2へ。
2024年1月19日
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