13.公爵side

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13.公爵side

  「貴族なんてそんなものだ。新しい噂の種ができれば前の事なんて忘れられる。それに、今は王太子の件で何かと賑やかだからな」 「あぁそれで。確かに王家の醜聞に比べれば一介の子爵家風情の醜聞なんて可愛いものでしょうけど……。それにしても王家はこれからどうするのかしら?王太子を()()()()にしておくの?」 「まだ若いからな。更生できる可能性はゼロではない。だが、難しいだろう。国王陛下がどんな判断を下すのか。それによって今後の動き方が変わる」 「例の男爵令嬢(王太子の愛妾)の婿は決まったの?」 「いいや。なかなか良い相手が見つからないようだ」 「あらまぁ」 「全く。何を考えているのやら」 「好きな子とイチャイチャする事じゃない?」 「発情期の猿か」 「そういう年頃なんでしょう」  身も蓋もない。  だがまぁ、十代の男なんてそんなものだろう。王家の場合、閨教育はしっかりと施されている筈だがな……。王太子だけの問題ではないようだ。 「なんにしても、数年は王都に出向かない方が無難だ」  巻き込まれてはたまらない。  王太子は婚約者の公爵令嬢を切った。後戻りはできないだろう。それは、例の男爵令嬢も同じ事だ。あの二人に覚悟があるのかどうかは別として。 「しがない子爵家は用事もないのに王都に行かないわ」 「よく言う」 「本当の事でしょう?」 「国内有数の資産を持つ女子爵が何を言ってる」 「公爵家には負けるわ」 「アザミの場合は現段階でも資産を増やし続けている。いや、お前が子爵家を継いだ時から子爵領の経済は飛躍的に伸びた。先祖代々の資産を持つ公爵家とは違う。誇っていいぞ」 「そうかしら?」 「そうだ」 「…………」 「なんだ?」 「キースに褒められると何だか気恥ずかしいわ」 「そうか?」 「ええ」  アザミが頬染めて微笑む。  こういうところは昔から変わらない。 「キース、一つ頼みがあるんだけど?」 「ん?」 「私の娘の名付け親(後見人)になって欲しいの」  どうやらアザミは元夫だけでなく、その家族も切り捨てる事にしたらしい。  アザミを大切にしていれば切り捨てられる事も無かったのに……。  あの子は義理堅い性格だ。表面上だけでも大事に扱っていれば、また違った未来があったかもしれないというのに……。  まぁ、自業自得だな。  私は心の中で呟いた。  その数年後、とある名門侯爵家が爵位を返上し、歴史から姿を消した。  そして、その領地は王領と成り代わる事になる。
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