いつか君に震えるだろうか

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 そして今他の参加者と一緒に座禅を組んで次々みんな叩かれてるわけで。  初めて座禅を組む人は棒でぶっ叩かれないらしいんだけど、今回は叩かれることを希望した人の座禅だから全員了承済み。  昔を振り返りながら、他の人が叩かれる音を聞きながら。俺はまだ一度も叩かれてない。だって身動きしなければ叩かれないんだから。 バシン! 「痛ぁ!? 私だけ力強くないですか!?」  彼女の悲鳴が聞こえる。声でかすぎだろ。叩かれた数を数えていたけどどうやら俺が最後だ。いや、終わりまでみんな座禅を組み続けるから二回目、三回目があるわけだ。  正直叩かれても俺は叩かれ慣れてるから、どうってことないんだけど。相手は一般人ってことで叩く力も加減してるだろうし。本気で殴られてきたからもっと痛い思いは知ってる、全然大した事ない。  薄っぺらい木の棒どころか、傘とか掃除機のヘッド部分とか辞書の角度とか置き時計とか。いろんなもので殴られてきたからな。  全然大した事ない、別に怖くもないし。なんでこんなものが俺に必要なんだろう。  パシン  一体どんな思いで他の人ぶっ叩いてるんだろうな。楽しいんだろうか? それとも慣れ過ぎて何も思っていないか。人だって思ってないのかもしれない。叩くのは仕事だから。そのうち寺にもAIとかロボットが導入されて、肩叩きロボとか出てくるかもしれない。名前だけ聞くと良いロボットだけどな。  飽きてきた、座禅。動かないのなんて簡単だ、これももう完璧にできる自信がある。早く終わらないかな。ヒマだ。  ぴたり、と。俺の真後ろで坊さんが止まった気配。なんだろう、俺だけ叩いてないから動かないか観察ってところなんだろうか。そんな性格悪いことするのかここの寺。別にいいけど、叩かれたくないわけじゃないし。叩きたきゃ叩けばいいし。  かわいそうだね、って思われたい?  彼女の言葉が頭をよぎる。  普通大変だったねとか、かわいそうだねとか。そういう言葉は力をもらえるはずなのに。なんで俺はそれがとてつもなくイライラするんだろう。  あの時はいつも震えていた。怯えてた? 母が怖かった? ああ、思い出したらだんだんなんか。  ぴくり。  自分でもわかるほどに肩が震えた。
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