いつか君に震えるだろうか

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 毎日震えて過ごしていた。  パシン  叩く音があたりに響く。  目があうと殴られた、蹴られた、飯なんてもらったこともない。  パシン  叩く音があたりに響く。  殴る理由なんて何でもよかったんだと思う。いや、理由なんてそもそもなかったのかもしれない。ただそこに存在するだけで全てがダメだったんだろう。  パシン  叩く音と、小さな悲鳴が響く。  ガリガリに痩せた俺を見て小学校が警察や児童相談所に通報しても、人の家の教育方針に口出しするなと追い返されるだけ。そしてお前が言いつけたのかと再び殴られる。  ほとんど会ったこともなかった父親はとっくにいなくなっていて。気がついたら母親と二人きり。そんなに俺が鬱陶しいのなら帰って来なければいいのに、わざわざ俺を殴るために帰ってくる。  そうやって幼少期を過ごしたせいか、俺は普通の人とは違う大人になったんだと思う。喜怒哀楽が表に出ない、というより喜怒哀楽というものがよくわからない。他にすることもないから勉強していたらいつの間にかトップになって。いろいろな人から支援を受けて大学に進学することができた。  でも何をやっても情熱というものが生まれない。だってやったらできてしまうから。できちゃったんだなあと思ったら急につまらなくなって飽きてやめてしまう。今やっている研究開発だけは続けてくれと、大学院や教授たちから泣きつかれる勢いで頼まれたから何とかやってるけど。もう飽きた。  そんな中で恋愛感情なんてかけらもないのにお付き合いが始まった。いろんな人に告白されてきたけど「お前誰だよ興味ない」か「鏡見てから言え」と言うと大体みんな手のひらを返して俺から離れていったのに。  彼女は「大丈夫、私もあなたに興味ないから!」という、意味不明なことを言ってニコニコ笑っていた。変な女だなって思ったけど、特に断る理由もないからその日から交際というやつがスタートした。 「私の好きなところなんか見つかった?」 「いや全然。でも嫌いなところは一つ見つけたかもしれない」 「え、なになに? どんなところ?」  なんで嫌いなところって言ったのに嬉しそうなんだよ。わけわからない。 「顔」 「わーお。親から授かった顔を嫌いって言われても、私の努力じゃどうにもできないね」 「俺の母親に、目元がなんとなく似てる」 「ありがとう」 「は?」 「そこそこにイケメンのあなたの母親ならそこそこ美女ってことでしょ。つまり私を美しいと褒めてくれてありがとう」  何言ってんだこいつ。
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