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いつの間にか、わたしは眠っていたようだ。
布団から顔を出すと、部屋の中は夜の闇に包まれていた。
夢を見ずに眠れたのはいつ以来だろう?
そんなことを、ぼんやりと考えながら、わたしはベッドの上に身体を起こした。
窓を見ると淡い月明かりが射し込み、部屋の中を白く染めている。
闇に慣れてきた眼でわたしは、部屋の中をそっと見渡した。
すると、ソファーの上では、いつの間にか帰ってきた波琉が毛布にくるまり、丸くなって眠っていた。
わたしは波琉を起こさないように、静かにベッドから降りると、キッチンへ向かった。
それから、水切りラックに立てかけてあったグラスを一つ手に取り、蛇口を捻って水を半分ほど満たした。
グラスに口を付けて、わたしはゆっくりと水を喉の奥に流し込んでいく。
ひんやりとした感触が、喉から胸の辺りへと順に下っていき、ほてった身体を冷やしてくれた。
わたしが飲み終えたグラスをシンクの中に置いた時、カチャリと音を立てて玄関の扉が開かれた。
わたしは吸い寄せられるように玄関の方に眼を向けた。
すると、そこには……
透が、静かに佇んでいた。
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