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12
ああ、また夢を見ているのか、わたしは思った。
だから、安易に喜んだりはしなかった。
だって、夢から覚めた時に絶望に襲われることが分かっていたから。
だけど、心と違って身体は素直に反応した。
わたしは透に駆け寄り、思いきり跳び着いた。
「透!」
「琴子」
わたし達は固く抱き合って、長い長いキスを交わした。
わたしの瞳から熱いものが溢れ出す。
透!透!透!透!透!透!透!……
わたしは心の中で、何度も何度も透の名前を叫んだ。叫びながら、わたしは透の頬に両手を添えて、貪るように激しい口づけを交わした。
わたしの本能が、そこにいる透が本物だと告げていた。
「バカ、バカ、バカ、バカ、バカ、バカ、バカ、バカ、バカ―――――――!!」
わたしは唇を離すと、透の胸を何度も叩いた。
透は、わたしの気が済むまで、わたしの拳をその胸でじっと受けとめた。
どれくらいの時間、わたしは透の胸を叩いていたのだろう。
いつしか力尽きたわたしは、透の足元にしゃがみ込むと、その両足にしがみついて、おいおいと泣いた。
「琴子、ごめん」
透は、そんなわたしの両肩に手を添えると、しゃがみ込んで、わたしを包み込むように優しく抱きしめた。
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