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 夜の街は思いのほか静かだった。  夜中ということもあり、人の話し声もなく、すれ違う車も一台もない。  まるで、世界の中に存在するのが、透とわたしの二人だけであるかのような気がした。  夜空には満月が輝き、澄渡る白い光を街全体に投げかけている。  その白い静寂の世界を、わたし達は黙ったまま、手を繋いで歩いた。  透を失って以来、荒れ狂う海を彷徨う小船のように揺れ動いていたわたしの心は、久方ぶりの平穏を取り戻した。  わたしは、そっと透の横顔を見つめた。  その横顔は、いつもの見慣れた透の横顔であるような気もしたし、どこか違うような気もした。  静謐な雰囲気を纏った透は、もうこの世のものではないのかもしれない。  だけど、それが何だと言うのだ。  透がいない苦しみに比べたら、この世の者であろうとなかろうと、そんなものはどうでもいいように思われた。  わたしは繋いでいる手に力を込めて、透の手をキュッと握った。  透が遠い場所に行ってしまわない様に。ずっと、わたしの側にいてくれるように。  そして、わたしは切に願った。  この夜が、ずっと終わらずに、永遠に続きますようにと。
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