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 そのまま朝が訪れて、また夜がやってきた。  一日が過ぎ、二日が過ぎ、一ヶ月が過ぎ、一年が過ぎた。  そして、もうどれだけか分からない、悠久の時が流れていった。  いつしか、わたし達の肉体は崩れ去り、精神だけが残された。  肉体の輪郭を失っても、わたし達は確かにそこに有り続けて、お互いに固く抱きしめ合っていた。  春が過ぎ、夏が過ぎ、秋が過ぎ、冬が過ぎていった。再び悠久の時が流れていった。  その間に、わたし達の精神は少しずつ交わっていき、やがて完全に融け合って、一つの精神として結びついた。  わたしの中に透がいて、透の中にわたしがいた。  わたしは今までに感じたことがない一体感の中、余りの幸せに涙が止め処なく溢れだした。  その涙は思いのほか熱く、わたしの、否、わたし達の頬を濡らして、コンクリートの橋の上に次から次へと零れ落ちていった。  気が付くと、わたし達はそれぞれに肉体を取り戻しており、橋の上で抱き合っていた。  夜空には、先程までと変わらぬ満月があり、白い光を放っている。  不思議な事に、わたしの心の中にあった深い悲しみは消え失せていた。  わたし達は、お互いにどちらからともなく身体を離した。  透が微笑んで、わたしの眼を見つめる。わたしも微笑んで、透の目を見つめ返した。 「時がきたら、ここに迎えに来るよ」  透がわたしに静かに告げた。  わたしは透の言葉に黙って頷いた。  そしてお互いに歩み寄り、そっと最後の口付けを交わした。
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