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 透は胸の辺りで小さく手を振ると、背を向けて橋の向こう側へと歩いて行った。  わたしは透の背中が小さくなって、見えなくなるまで見送った。  一度だけ、透は振り返ると両手を上げて大きく手を振った。  わたしも両手を上げて大きく手を振り返した。 「ありがとう。透」  わたしは小さな声で呟いた。少しだけ涙が零れた。だけど、その涙は今までとは違う。そう思えた。  これからも、透のことを思い出して泣いてしまうことがあるかもしれない。否、きっとあるだろう。でも、これからは透の思い出と共に、前を向いて歩いて行ける、そんな気がした。  わたしは透が完全に見えなくなるのを見届けてから振り返ると、橋のこちら側へと一歩を踏み出した。
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