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 夢の中でなら会えた。  透に。 「透!」  わたしは夢の中で彼に駆け寄り、その胸に跳び込んだ。  彼は優しく、わたしを抱きしめてくれる。  彼が抱く腕の強さ、その温もり、そして、彼の匂い……  全部、今までと同じ。 「よかった、生きてたんだ」  わたしは彼の腕に包まれながら、彼の存在を確かめるように、その背中をぎゅっと強く握りしめた。 「琴子、何言ってるの、僕が死ぬわけなんてないだろう」  そう言って透は微笑む。 「うん」  わたしは彼の腕の中で、幼子のように素直にうなずく。  ああ、よかった。  透は死んでなんかいない。  生きている。  生きているんだ。  わたしは安心感で満たされる。胸の中につかえていた重たいものがすうっととれていく。 「透、ずっと一緒だぞ、どこへも行くな」  わたしは念を押す。 「当たり前だろ」  透の眼が、わたしを真っ直ぐに見つめる。  わたしたちは唇を重ねて、強く強く抱きしめ合った。  
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