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 眼を覚ました時、どちらが現実なのか、よく分からなかった。  透が生きているのか、死んでしまったのか。  しかし、混乱しているのは少しの間で、徐々に現実が押し寄せてくる。  透が、もうこの世にはいない、という現実。  そして、わたしは、また、苦しみと悲しみと絶望の淵に落ちていく。  眼を覚ました後の、いつものルーティーン。  ベッドの上に上半身を起こしたまま、しばらく動けなかった。  その後、わたしは眼を開けたまま、再び、のろのろとベッドに上半身を横たえた。  ベッドに横になったまま、わたしは向かい側にある壁をじっと見つめる。  そのまま時間だけが過ぎていく。  時折、アパートの前を通り過ぎる車のエンジン音が遠くに聞こえた。  気が付くと、わたしは、いつの間にかキッチンのシンクの前に立っていた。  そして、シンクの端を両手で掴みながら、見るとはなく正面にある窓を見ていた。  陽はすでに傾き、窓から差し込む黄昏時の陽光が、わたしの顔を茜色に照らす。  わたしは……  何をしているのだろう?  何も考えることができなかった。  また涙が溢れてきた。  透に会いたかった。  透……  わたしは声を出さずに涙を流し続けた。  シンクの中の鈍色に、わたしの顔が歪んで映る。  わたしは、その歪んだ顔を見つめながら、死んだら透の所に行けるのだろうか、と考えた。
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