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 どうして気付けなかったのだろう。  透の変化に。  分かっていたはずなのに。  透の心の傷を。  透は中学生の時に受けた、いじめが元で、ずっと引きこもっていた。  最近、外出できるまでに回復していたけど……  あの日、透と久し振りに外に出かけた日。  嬉しくて。  なのに、訳もなく不安で。  妙にはしゃいだり、妙に落ち込んだりして、何だか自分を上手く保てなかった。  微かな違和感?  微かな気配を、わたしは感じていたはずなのに、別れ際に交わした約束に、別れ際の透の笑顔に、安心してしまった。 「透のばか、わたしに脚本、書いてくれるって言ったのに……」
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