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6
シンクを掴んでいた手を離し、わたしはベッドに戻った。
枕元のローテーブルに眼をやると、簡単な食事が置かれている。
波琉が用意してくれたのだろう。
優しい子。
だけど、全く食べる気になれない。
わたしは、また、ベッドに潜り込むと布団の中で丸くなった。
わたしには、五人、付き合っている人がいた。
波琉は、その内の一人だ。
わたしは自分の気持ちに正直に生きたかった。
だから、好きな人ができると自分から積極的にアプローチした。
新しく好きな人ができたことを伝えても、誰一人わたしの元を去らなかった。
それをいいことに、わたしも自分から別れを切り出したりはしなかった。
結果、五人の人と付き合うことになった。
ただ、大学を卒業して仕事に打ち込むようになると、わたしの人への関心は薄れた。
恋人関係は幾つかの話し合いを経て次第に解消されていった。
自分勝手だな、と自分でも思う。
その中で、透と波琉だけが残った。
波琉とはほぼ同棲状態だったから。
透は、透だけは、特別だった。
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