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 シンクを掴んでいた手を離し、わたしはベッドに戻った。  枕元のローテーブルに眼をやると、簡単な食事が置かれている。  波琉(はる)が用意してくれたのだろう。  優しい子。  だけど、全く食べる気になれない。  わたしは、また、ベッドに潜り込むと布団の中で丸くなった。  わたしには、五人、付き合っている人がいた。 波琉(はる)は、その内の一人だ。  わたしは自分の気持ちに正直に生きたかった。  だから、好きな人ができると自分から積極的にアプローチした。  新しく好きな人ができたことを伝えても、誰一人わたしの元を去らなかった。  それをいいことに、わたしも自分から別れを切り出したりはしなかった。  結果、五人の人と付き合うことになった。  ただ、大学を卒業して仕事に打ち込むようになると、わたしの人への関心は薄れた。  恋人関係は幾つかの話し合いを経て次第に解消されていった。  自分勝手だな、と自分でも思う。  その中で、透と波琉(はる)だけが残った。  波琉(はる)とはほぼ同棲状態だったから。  透は、透だけは、特別だった。
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