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8
幼い頃、わたしは、いつも透と一緒にいた。
父と離婚したばかりの母は、女手一つで、わたしを育てなければいけなかった。
だから、幼いわたしに構っている暇は無かった。
仕事から帰ってきた母は、夕食の準備や洗濯などの家事を猛スピードで片付けていった。そして、最後にわたしを風呂に入れると、布団にパタリと倒れ込んで泥のように眠った。
朝は早くに起きだし、朝食を作ると洗濯物を干して、仕事に行く為の身支度を整えた。
美しかった母は、どれだけ忙しくても身支度を整えることだけは疎かにしなかった。
わたしは、化粧台の前で入念に化粧をする母の背中を見つめながら、朝食を食べた。
何か話したいことがあっても、そんな母に話しかけることはとてもできなかった。
寂しくなったわたしは、いつも透のところに行って、お願いばかりしていた。
公園に行きたい、ブランコに乗りたい、弟が欲しい。
わたしは、満たされない想いを全て透にぶつけた。
透は、そんなわたしのお願いを、いつも一生懸命叶えてくれた。(弟以外)
わたしは、すぐに透のことが大好きになった。
そして、願いを叶えてくれた透のほっぺに、いつもチュッとキスをした。
中学生になると、わたしたちは当然のように付き合い始めた。
そして、結ばれた。
わたし達の世界は二人で完結していた。
ずっと一緒にいられると思っていた。
なのに、事件は起きてしまった。
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