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 わたしが、透がいじめられていることに気付いたのは、随分経ってからのことで、その時には、もう、透の心はボロボロだった。 「透」 「……」 「透!」 「ああ……琴子。何?」  明らかに様子がおかしかった。 「何があった?話せ」 「……」  わたしが問い詰めても、透は何も話さなかった。  なぜなら、原因は、わたしだったから。  正直、わたしはもてた。母譲りの美しい容姿のおかげで。  しかし、この性格である。  わたしは、男達の告白をばっさばっさと切り捨てた。  結果、男達の嫉妬心は透に向かった。 「何で、おまえごときが琴子と付き合ってんだよ」  手を変え品を変え、男達は透をいたぶった。  ある時は暴力を振るい、またある時は物を隠すなどして、肉体的にも、精神的にも、透を追い込んでいった。  透は学校に来られなくなり、家に引きこもるようになってしまった。
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