38人が本棚に入れています
本棚に追加
「おじさん、名前はなに?」
泰然が男にたずねる。彼は目上の人間にも平気でため口をきくという性質があった。
「石脇と言います」
男、改め石脇は、自分より四十歳は年下の泰然にたいしても礼儀正しい。
「生きていた時は、なんの仕事をしていたの?」
「警備員をしていました」
「家族はいたの?」
「いえ、両親はどちらとも私が若い頃に他界していて、私自身は人生で一度も結婚しなかったので、家族と呼べる人はいませんでした。家族だけじゃなくて友だちもいない、孤独な人生だったんです」
「……」
わたるはそう述べる石脇がせつない表情をしているように見え、胸のあたりをおさえる。
「食霊ってことは、食べたい物があるんだよね? 石脇さんはなにを食べたいの?」
泰然は質問をくり返す。
最初のコメントを投稿しよう!