第一話 朝食はステーキに限る

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「いえ、皆さんと食べる方が幸せに感じています。ずっと独りだったので、最後の食事がそうでなくてよかった」  石脇は最後まで笑顔をくずすことなく完食する。初めて会ったばかりなのにそこまで特別に思ってもらえてうれしいと、わたるは感じた。 「七森家の皆さん、本当にありがとうございました。この味、このご恩、みなさんの笑顔、成仏しても忘れません」  石脇は優しい目をしたまま、ゆっくりと消えていく。食霊は成仏すると、全身が少しずつ白い砂のようになっていき、空中で舞うようにして消える。体は一度そうなると二度と戻らず、最後はこの世から完全にいなくなる。
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