第一話 朝食はステーキに限る

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 今のわたるの悩みといえば泰然好みの食事を毎日のように与えなければいけないことで、その泰然がいなくなれば、わたるの悩みもなくなる。今は泰然が成仏できる方法を一番に考えるべきだと。 「わかった。でも、おこづかいの範囲でね」 「やったー!」  わたるの許可ひとつではしゃぐ泰然はまるで小さな子供だ。また、ふたりは同じ年に生まれたのに、姉と弟のようでもある。 「じゃあ、水丘(みずおか)商店街を通っていかないか?」  泰然が近所の商店通りの名前を出す。 「なんで? 学校からは遠回りになるよ」 「青春するための下見だよ」  時間に余裕があることもあり、わたるは従った。
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